ファッション
特集 NY・ロンドンコレクション2025年春夏

「3.1 フィリップ リム」 にVERDYが“盗作”と抗議 ショーは20周年祝福ムードも後味悪く

3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」は、2025年春夏コレクションをニューヨークで9月8日(現地時間)発表した。

同ブランドは25年春夏シーズンでブランド創立20周年を迎える。浮き沈みの激しい世の中やファッションに対する価値観の変化が起こる中で、ニューヨーク・ファッション・ウィークをけん引する存在として20年間第一線を走り続けてきた。また、リムはアメリカにおけるアジア系コミュニティの構築や団結、活躍にも注力してきたことで知られる。

コレクションの出発点は「喜び」。文字通り、渾身の51体は純粋にファッションに対する喜びや高揚感が感じられるものだった。リムは20年前の記憶を遡った。初めてニューヨークに引っ越してきた時の喜びや最初にパンツを作って足を通した時の喜び、初めてプレゼンテーションを発表した時の喜び。「喜びの記憶を辿ることが多くなった」という言葉の背景には、混沌とした世の中に対するアンチテーゼやファッションがもたらす喜びを分かち合いたいという思いが隠されているようだ。

軽やかさと大胆さ
ウエラブルな素材使いの妙

ファーストルックは繊細なレースのドレスにパンツをコーディネート。軽さと共に構築感のあるシルエットがランウェイをモデルが歩くたびにふわふわとした軽快感を放った。花々がモチーフとなった大胆なレース、繊細なレース、鳥の羽やファーのように軽さのあるフリンジ状の素材はモデルの動きとともに軽やかに揺れ、その軽やかさが高揚感とリンクするかのようにテンポ良く目の前を通り過ぎていく。得意のデニムやミリタリーテイストのルックも健在。デニムはフリルやギャザーを寄せたスカートでロマンティックさをプラスしたり、繊細な素材とのコーディネーションで柔らかさを出している。スタイリングの妙で複雑に見えるアイテムも、一点一点はウェアラブルで日常着として取り入れやすい。

ヴィヴィッドな黄色や緑、オレンジなど、今回は色がもたらすパワーからも喜びが感じられた。ベーシックな色味の間に差し込まれた鮮やかな色はスタイリングのスパイスになっている。歌手のチャーリーXCXが火付け役となった"ブラット・グリーン(Brat Green)”を思わせるヴィヴィッドなグリーンも効果的に使われていた。

祝福ムードも盗作騒動で後味悪く

20周年の節目を迎え、喜びが開花したコレクションからは、ブランドが未来へと新たな一歩を踏み出そうという力強さを感じさせた。「Don’t Cry Tonight」「Enjoy the moment」「Always for everybody!」とプリントされたメッセージTシャツは、リムがこのショーで伝えたいメッセージをダイレクトに綴ったものにも思えた。

ただショーが終わると、グラフィックアーティストのVERDYがインスタグラムのストーリーズで、これらのTシャツデザインが「自身の作品の盗用」だとして抗議するコメントを投稿。「僕はこれをデザインしていないし、公式なコラボレーションでもない(中略)この規模のデザイナーが、創造性に欠けており、怠惰であるのはとても残念」と怒りをつづった。

これに対し「3.1 フィリップ リム」は日本時間10日にブランド公式インスタグラムのストーリーを更新し、当該作品のビンテージのスローガンTシャツなどが着想源であるとした上で、VERDYサイドに連絡を取り、当該Tシャツの全てのマーケティングを一時停止したと説明、謝罪した。

ショーのフィナーレは拍手に包まれ、リムが大切にしてきたコミュニティーの仲間たちがバックステージに押し寄せるなど、祝福ムードに包まれていた。それだけに、後味の悪い形となってしまった今回の盗作騒動が残念でならない。

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