大丸松坂屋百貨店は11日、松坂屋名古屋店の大規模改装の内容を発表した。売り場面積の3割に相当する約2万7000平方メートルが対象で、今年秋から来年秋にかけて段階的に改装オープンする。引き続きラグジュアリーブランドを拡充するともに、美術や酒類などカテゴリーを強化する。一方で長らく最大の面積を占めてきた婦人服の売り場は大胆に減らす。改装フロアで26年度に42%の増収を見込む。
「栄エリアの価値を高める」
名古屋店にとって約20年ぶりの大規模改装となる。現在の場所に店舗を構えてから来年で100年を迎えるのに合わせ、新しさを強く打ち出し、潜在的な顧客を呼び込む。同店は売上高に占める外商の割合が約5割と大きい。目の肥えた富裕層の満足度を高めるため、改装と並行して外商部門と営業部門の連携を強める組織改変にも今月着手した。
改装には約63億円を投じる。大丸松坂屋で進行中の3カ年計画で全国15店舗に割り当てる改装予算のうち、4割を充てる。11日に名古屋店で行われた会見に登壇した宗森耕二社長は「名古屋エリアに重点的に取り組む。松坂屋だけでなく、隣接する(同じJ.フロント リテイリング傘下の)パルコ、錦3丁目で建設中の『ザ・ランドマーク名古屋栄』(26年開業予定)をつなげて、栄エリアの価値を高める」と話した。
改装のポイントはカテゴリーバランス(商品構成)の変更だ。改装前に比べて、売り場面積でラグジュアリーブランドは40%増えるのに対し、婦人服は61%減る。営業本部長である加藤俊樹・取締役兼常務執行役員は「以前から顕在化していた課題を解決する」と説明する。加藤取締役によると、大丸松坂屋の全店の19年度と23年度の比較では、国内ブランドを主力とした婦人服の売り上げは面積の縮小もあって25%減少。一方、主力店舗で増床したラグジュアリーブランドは2倍の規模になった。高級時計も6割増と成長している。「インターナショナルに通用するものをお客さまは支持するようになっている」「所得の二極化というよりも、MZ世代(ミレニアル世代とZ世代)の消費の二極化に対応する」と話す。
外商比率5割の強みを生かす
11月中旬に本館4階にファッション、ライフスタイル、カフェ、下旬に同3階のラグジュアリーブランドをオープンする。4階のフロア中央には松坂屋が独自に国内のデザイナーズブランドやジュエリーブランドを集めた新ゾーンを設ける。12月中旬には本館8階に800平方メートルの美術売り場を作る。「東海エリアのアートマーケットのハブ」をコンセプトに2倍に増床し、カフェを併設し、作品に気軽に触れられる環境にする。25年秋には北館6階をラグジュアリービューティサロンとしてオープンする。
空間設計は建築家の永山祐子氏が担当する。松坂屋の歴史と未来像を踏まえて、落ち着いた雰囲気の銅と真鍮をメイン素材として採用する。永山氏は「訪れるお客さまはもちろん、働く人が輝けるステージのような空間にしたい。生き生きとした交流が生まれる場になってほしい」と語った。
松坂屋名古屋店は本館、北館、南館の3館体制で売り場面積は約8万6000平方メートル。24年2月期の売上高は1268億円で、大丸松坂屋の中では一番店(売上高が全国最大)だ。けん引するのは外商で、コロナ前に比べて2割成長した。売上高に占める外商比率5割は、百貨店業界の中でも際立って高い。近年は20〜40代の比較的若い外商顧客が増えており、世代交代に伴う新しいニーズに応えるのが課題だった。コロナ禍の改装でもラグジュアリーブランドや高級時計の売り場を増床してきたが、今回の改装でさらに攻勢をかける。
齊藤毅店長は「名古屋にはよいお客さまがたくさんいるのに、われわれの変化へのスピードが追いついていなかった。(改装を機に)上質な消費のニーズに応える売り場とサービス体制を整える」と話す。外商員も増員し、外商員の属人的な能力に頼るだけでなく、組織として顧客の要望に応えられるようなチーム体制に改めた。
名古屋では、JR名古屋高島屋がある名古屋駅(名駅)エリアと松坂屋名古屋店がある栄エリアが二大商業地として集客を競い合う。ターミナル直結の利便性を生かして幅広い層を集めるJR名古屋高島屋に対し、松坂屋名古屋店は伝統的に強い外商に磨きをかける。