三菱地所・サイモンの運営する「御殿場プレミアム・アウトレット(以下、御殿場PO)」が好調だ。2024年3期の売上高は1240億円と、過去最高を更新した。店舗数約290店舗、店舗面積約6.1万㎡の御殿場POの売上高は、アウトレットモールとして最大規模であるだけでなく、大型ショッピングモールやファッションビルを含めた日本のショッピングセンターとしてもトップになる(コロナ禍以降、非公表の成田空港のリテール事業を除く)。円安に伴う訪日客の増加を受け、24年4〜9月も前年以上のペースで推移している。好調の理由を加藤健太・御殿場プレミアム・アウトレット支配人に聞いた。
好調要因は、「インバウンドより国内」
WWD:好調の理由は?
加藤健太・御殿場プレミアム・アウトレット支配人(以下、加藤):24年3月期は前期比27.0%増で、客数は9.4増の1118万人だった。いずれも過去最高だった。昨年下期から猛烈に伸びた。訪日外国人客による免税売り上げはそれなりに好調だが、客数はコロナ禍前にピークだった2018年の数字には戻ってはいない。むしろ国内客の客足と売り上げがしっかりと伸ばせているのが要因だ。
WWD:好調なブランドは?
加藤:外資のラグジュアリーブランドと「ナイキ」「アディダス」といったスポーツブランドに加え、「メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)」「アミ パリス(AMI PARIS)」といったデザイナーブランドが伸びている。
WWD:25年3月期の見通しは?
加藤:上期は、前年下期の勢いそのままに絶好調だった。下期もやや不透明感はあるものの、トータルでは前年をクリアできそうだ。
WWD:円安は落ち着きつつあり、「インバウンドバブル」は落ち着きを見せている。影響は?
加藤:免税売り上げの数字は公表していないものの、「御殿場プレミアム・アウトレット」はコロナ禍前から、割合はかなり高く、都心の大型百貨店並みと、かなり高かった。都心ではいわゆる「インバウンドバブル」の様相は落ち着きつつあると思うが、御殿場に関しては、まだ伸び代は大きい。コロナ禍前は、中国からの訪日客を中心に連日200台以上の大型バスに乗り込んだ客が押し寄せていたが、今はそれほどでもない。ピークの18年と比べると客数でいうと半分程度だ。「インバウンド」自体の質が大きく変わったこともあるが、中国からの客足自体が戻っていない。だが客単価がかなり伸びていることと、下期は「国慶節」「紅葉シーズン」「春節」と大型イベントが目白押しで、御殿場に関しては免税売り上げはまだ伸びる可能性が高い。
人手不足解消のため、「ES」施策を強化
WWD:課題は?
加藤:人手不足だ。御殿場は、周囲に有力企業の工場が多く、以前から慢性的な人手不足に悩まされてきた。テナントからは「規模に(販売スタッフの数が)追いついていない」という悩みもよく寄せられる。運営側の我々としては、保育園を併設するなどの販売スタッフの方々のES(従業員満足度)を高め施策を行ってきた。
WWD:成果は?
加藤:テナントの多くが時給や給与の引き上げを行っているが、そもそも就業可能人口が少なく、必ずしも給与の高さのみがネックになっているわけではなく、特効薬はない。御殿場POでは約4000人のスタッフが働いているが、基本的には地道にESを高める施策を行い、一度就労したスタッフにできるだけ長く働いてもらうというのが王道の考え方になる。やりがいを高めるべく、独自のロープレ大会の実施や、閉館後のイベントとして従業員を対象にした露店や大型花火を打ち上げるナイトイベント「おつかれNight!!」を実施しているほか、スタッフにフォーカスし、接客技術とホスピタリティをフォーカスした新制度「プレミアムアウトレット スタッフアワード」を新設し,オウンドメディアで紹介している。