「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の2025年春夏コレクションは、ついに洋服の範疇を超え、彫刻のようなオブジェまで登場した。デザイナーの川久保玲は、混沌とした世の中を憂いつつ、「透明性を持ってクリエイションしたら、何かが見えるかもしれない」と話す。
コレクションの中で何度か登場したのは、モデルの体に布などを詰め込んだオーガンジーの球体をいくつも取り付けたドレスだ。ある球体は、白いチュールを黒いオーガンジーで包んだもの。別の球体は血飛沫のような白と赤の布地を同じく白や赤のオーガンジーで覆っている。また、「SOS」などの文字が見える球体もあった。クシャクシャっと丸めた布を詰め込んだ球体は、心の中のモヤモヤの表現だったり、なかなか外には吐露できない魂の叫び、もしくは、すでに傷ついてしまった心の痛みを表現しているのだろう。
中盤はウエディングケーキのような形の柱状のオブジェ、そして後半にも円錐などの立体と、時には洋服という概念から逸脱さえしているルックも現れた。もはや洋服のような形にさえ収斂しない、常にうごめく心情を表現しているのだろうか?
一方、白と赤を基調とした終盤からは祝祭のようなムード、そして終盤の白い巨大なルックからは希望の光が広がっていくような雰囲気を感じた。
ここ数年、「コム デ ギャルソン」は、現代社会を憂いつつも、あくまで希望を忘れない、一筋の光に価値を見出すようなメッセージを発信している。きっと今回も、悲嘆するのみならず、それでもポジティブに歩みを進めようというメッセージを送っているのだろう。