「マーカ(MARKA)」「マーカウェア(MARKAWARE)」を運営するエグジステンスは、2023年秋に試験的に立ち上げたカシミヤブランド「キャッシュ アンド バルバ(CASH & BARBA)」のアイテム数を拡充し、24-25年秋冬シーズンに本格始動する。デザイナーの石川俊介が原料産地の開拓から生産ラインの確保、デザインまでの全てを手掛け、高品質なカミシアニットの適正価格での提供を目指す。
「キャッシュ アンド バルバ」は、石川が手掛ける「テクスト(TEXT)」からカシミヤのシリーズを独立させたプロジェクトだ。同ブランドでは“日常に行き届くラグジュアリー”を掲げ、全アイテムに高品質なカシミヤとオーガニックな超長綿を用いながら、販路をD2Cに限定することでリーズナブルな価格を実現した。24-25年秋冬シーズンは生産拠点をさらに拡大し、型数は前年の倍以上となる17型100点以上をそろえる。
“メード・イン・アジア”で勝負
生産は全てアジア圏で行う。外モンゴルの、毛足が長いカシミヤ山羊の原毛を使ったモンゴリアンカシミヤは、日常使いに適した耐久性と快適な着心地を備える。価格帯はトップスとパンツのセットアップが5万8300円で、プルオーバー3万800円〜、カーディガン3万5200円〜など。内モンゴル産のキャッシュベイビーシリーズは、プルオーバー6万6000円〜、カーディガン6万9300円〜で、きれいな発色と柔らかい風合いが特徴だ。石川デザイナーがタイの縫製工場を訪れてディレクションしたウーステッドカシミヤのカーディガン(3万9600円)は部分的に手縫いして縫い代を平らに処理し、着心地ときれいなシルエットを追求するなど、カシミヤを熟知する石川デザイナーらしいディテールにもこだわる。同じくインドネシアを訪ねて現地青年と試行錯誤を重ねた新作のカシミヤ混デニムは、ジーンズ2型(共に3万9600円)とジャケット(5万7200円)を用意する。
さらに、往年の名作ドライバーズニットにオマージュを捧げた“あのニット”や、高級ブランドを思わせる“あの色”シリーズなど、遊び心も盛り込んだ。石川デザイナーは「特に、最近のラグジュアリーブランドの植民地ビジネスのようなモノづくりには強く疑問を感じている。表向きにはサステナブルだと発信していても、実際に産地で状況を見たり聞いたりすると、全く違う。異常な価格高騰も続いており、高品質な服にますます手が届きづらくなっている。だから『キャッシュ アンド バルバ』のモノづくりを通じて、カシミヤの魅力やいい服の価値をたくさんの人に知ってもらいたい」と語る。
石川デザイナーが目指すサステナブルなモノづくりには、原料の調達先や生産拠点との密なコミュニケーションが必要不可欠だ。“カシミヤの日常着”の品質と価格帯を支えているのは、石川デザイナーが足で稼いだ信頼関係だろう。海外にもアトリエを設け、「モンゴルはもちろん、タイやインドネシアなど、今年だけで飛行機の国際線に60回以上は乗っている。こんなデザイナーいないと思う」。今後は超長綿の商品開発も進めて、通年での新作発表を計画する。