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松屋銀座「免税売上高シェア5割」に 課題も浮上

松屋銀座本店の上期(2024年3〜8月期)の総額売上高は、前年同期比32.3%増の631億円だった。インバウンド(訪日客)による免税売上高が同2.2倍の314億円に拡大し、全体に占めるシェアは約49.6%(前年同期は約29.2%)に上昇した。一方、国内客の売上高は同6%減で終わった。過去最高の業績を更新しながらも、新たな課題も浮上している。

免税売上高の倍増は、コロナ明けの回復が遅れていた中国人客が寄与した。コロナ前の19年上期に81億円だった中国人による免税売上高は、23年上期の67億円を経て、24年上期は210億円に跳ね上がった。対ドルレートだけでなく、対人民元レートでも円安が進んでおり、19年に1人民元=14円だったのが現在は21円前後。為替差を背景にラグジュアリーブランドや時計・宝飾品などの高額品が活発に動いた。中国人の客単価は前年同期に比べて35%増の約32.8万円だった。

銀座本店は7月の売上高が121億円に達し、1992年12月以来32年ぶりに月間売上高の最高値を更新した。これも訪日客がけん引したもので、当月の免税売上高のシェアは6割に達した。

銀座本店はコロナ前の免税売上高のシェアが25%前後だった。訪日客が半分を占める新しい領域に入ったともいえるが、「手放しでは喜べない」(森田一則・取締役常務執行役員)状況でもある。

同店は高額品の品ぞろえに強みを持つ。だが、そのラグジュアリーブランドの国内客の売上高が同18%減とふるわない。ラグジュアリーブランドの相次ぐ大幅値上げに、富裕層以外の国内客が離反してしまったからだ。店頭では訪日客への対応に追われ、国内客の接客機会が減る課題も浮上している。

対策の一つとしてOMO(オンラインとオフラインの融合)サービス「MATSUYA.com」を11月に本格始動する。ECとしての機能だけでなく、購入品が決まっている訪日客のために商品を事前予約できるピックアップカウンターを新設して混雑緩和につなげる。また化粧品では国内客をじっくり接客できるスペースを稼働させた。MDにおいても高価になりすぎたラグジュアリーブランドとの間をつなぐ価格帯の服飾雑貨やアパレルの品ぞろえを厚くする。

10日に発表した松屋の2024年3〜8月期連結業績は、総額売上高が前年同期比30.7%増の704億円、営業利益が約3倍の27億円、純利益が63.3%増の17億円だった。25年2月期の予想は総額売上高が前期比23.5%増の1420億円、営業利益が同68.1%増の50億円、純利益が同14.0%増の30億円。銀座本店の総額売上高は同23.3%増の1255億円の見通しで、免税売上高のシェアも5割を想定する。

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