毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年10月21日号からの抜粋です)
遠藤:最近、若者の服装に、彼らが生まれる前の平成のものや、かつて流行して1度廃れたものを取り入れている姿を見かけるようになりました。彼・彼女らは、どうやらそれらを「エモい」と感じている様子。その背景やどんなところに引かれているのかを探ろうと特集を企画しました。
佐藤:まず街に出てスナップをしましたね。特徴的なスタイルの若者に声をかけて取材しましたが、印象的だったのは、みんな丁寧に応えてくれたこと。そんな若者の「お行儀の良さ」が、消費者行動論の水師裕先生の若者の心理を探る話につながりました。
遠藤:ギャルのスタイルを取り入れていても、そのマインドまでは踏襲しておらず、あくまで“ファッション”なんですよね。人前で怒られるのはもちろん、褒められるのも嫌がる、注目されたくない心理が、「お行儀の良さ」につながっているというのは納得でした。
佐藤:平成のギャル文化には強い自己主張や元気さがありました。“デオドラント化”した現代社会で、若者たちは常に自分を抑制しているから、主張の強いスタイルに憧れるのではないか、という水師先生の考察には「なるほど!」と感心しました。なんでも自己責任と言われてしまう時代で、不安感を抱えているからこそ、Y2Kを口実に使い、どこかで自分をさらけ出したいのかもしれませんね。遠藤さんは何が印象に残りましたか?
新しいものが混ざっていることが大事
遠藤:私はストリートをスナップし続けて44年のアクロス編集部を取材したのですが、ギャル男のリバイバルの写真が衝撃的でした。2007年のギャル男が、まさにそのまま24年に復活。ただ足元は、先の尖った革靴ではなく、「グラウンズ(GROUNDS)」の厚底スニーカー。そのままのコスプレではなく、新しいものが混ざっていくことで、24年らしい“ニューレトロ”になるんだなと、実感しました。また、座談会では、みんな00年代に興味があるけれど、参照元がバラバラで、嗜好もスタイルも全然違うというのが、リアルで面白いと思いました。
佐藤:古いだけでは魅力的でないんですよね。どこかに新しさがないと。懐かしの平成スタイルに、最新のフィルターをかけて作ったスタイルが広がり、それが新たなスタイルのベースになっていく―そうしたスパイラルが見える特集になったと思います!