アシックスは足元の好調を受けて、2026年12月期を最終年度とする中期経営計画を上方修正した。23年に発表していた当初計画は、既に24年12月期で超過見込み。新中計では、営業利益1300億円以上(修正前は800億円以上)、営業利益率17%以上(同12%以上)、売上高年平均成長率10%前後(同7〜10%)、ROA15%前後(同10%前後)を掲げる。「当社にはまだまだ成長余地がある。ここ数年のような急激な伸びが続くとは思わないが、この中計はわれわれの自信の表れ」と廣田康人会長CEO。
24年12月期業績は、2回の上方修正をへて売上高が前期比19.2%増の6800億円、営業利益が同84.4%増の1000億円、営業利益率14.7%で着地する見込み。スポーツスタイルとオニツカタイガーの躍進が営業利益の大幅拡大をけん引した。パフォーマンスランニングは引き続き堅調で、高価格帯製品への注力で単価が上昇、在庫管理徹底によるセール抑制、ECを中心とした直販拡大で粗利が大幅に改善した。地域別では日米欧が成長。今後は中華圏やインド・東南アジアなど新興国にもさらに注力する。
主に投資家に向けた11月19日の説明会では、「イノベーションがない企業は成長できない」(富永満之社長COO)として、もうけをさらなるイノベーションやR&Dネットワーク構築のために投資すると発表。1990年に竣工したアシックススポーツ工学研究所は設備も古くなってきているとして、それに代わる研究ハブ“アシックス イノベーション キャンパス”を神戸に設置する構想を明かした。
ライフスタイルスニーカーの
ライバルは「ニューバランス」?
説明会では、「アシックスの成長ドライバーに仲間入りしつつある」(廣田会長)、ライフスタイルカテゴリーのスポーツスタイルの戦略も発表した。顧客ターゲットを明確に定め、中高級品にフォーカスして適切な需給コントロールで成長してきた過去5年間を振り返ると共に、カテゴリー売上高として、26年12月期に1550億円(24年12月期は前期比約63.5%増の970億円で着地見込み)という目標を公表した。
スポーツスタイルが主戦場とする90ドル(約1万3770円)以上のライフスタイルスニーカー市場において、「恐らくナイキ(NIKE)は当社の8〜9倍、企業規模や製品構成も当社と近いニューバランス(NEW BALANCE)は3〜4倍のシェアがあるが、われわれも24年には2兆9000億円の市場の4.3%ほどを獲っている」と鈴木豪執行役員スポーツスタイル統括部長。今は他社を含めランニングシューズ自体がファッションとしてトレンド化しており、それがスポーツスタイルの成長に貢献したという指摘もあるが、「濃淡はありつつもランニングシューズはいつの時代も支持され続けている。また、当社にはテニスやレスリングなど参照すべき他競技のヘリテージもある」などと話した。