ファッション
特集 進化するOEM・ODM企業 第7回 / 全8回

ニット一筋50年の生き字引が語る 世界的デザイナーズブランドから信頼されるための“挑戦心”

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ニット専業OEM(相手先ブランドの生産)のハイセンヰ(東京・浅草橋)でアパレル事業部の取締役部長を務める吉田寿弘さん(73)は、ニット製造に携わって50年。まさに、ニットの全てを知り尽くす生き字引といえる存在だ。ハイセンヰは、国内デザイナーズブランドとの取引が全体の7割に達する、意匠に凝ったニットを得意とするOEM会社。OEMとは、メーカーと工場の間を取り持つ、いわば通訳者のような役割を果たす。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月2日号から抜粋・加筆しています。無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

OEM・ODMとはアパレル生産の“通訳”

ではどうして、“通訳”が必要なのか。

例えばデザイナーが「こんなニットを作りたい」というアイデアがあったとしても、仕様書を書くには専門知識も必要で、これなくして工場に発注はできない。仕様書ができたとしても、そのデザインやディテールを再現できるのが、どの工場なのかを知っている必要がある。いい工場を見つけられたとしても、そのニットを量産販売して、利益が出せるかを計算しなくてはならない。

デザイナーと工場の間には、そんな溝がいくつもあるのだが、その橋渡しをするのがOEM会社の役目。デザイナーやメーカーから受けた仕様書をベースに、技術者が理解できるよう手を加え、適切な工場を探す。サンプルで仕様をすり合わせした上で、コストや納期に合うよう仕様を調整し、量産の発注をかける。デザイナーと工場、双方の知識や感覚が必要な仕事だ。

工場から上がってきた量産品は、OEM会社での最終検品を経て、ブランドや小売店に納入される。ハイセンヰの取引先にはコム・デ・ギャルソン系列のブランドや「アンダーカバー(UNDERCOVER)」、「ビズビム(VISVIM)」といった世界的人気のブランドも名を連ねる。

“糸”から提案
デザイナーの想像を形に

ハイセンヰが世界的なデザイナーズブランドから信頼を受ける大きな理由の一つに、「デザインを“糸から”提案できる」点が挙げられる。前身は糸専門の商社であり、1990年代後半に吉田さんのニット専業OEM会社と合流してハイセンヰとなった。現在も世界中に紡績業者とのネットワークを持ち、取引先のニット工場に糸を納入している。

デザイナーのニットのイメージにかなう糸を提案し、国内の確かな技術力を持った工場に発注することで、難度の高いリクエストも形にする。「アイデアだけで、絵も何もない状態でやってくるデザイナーも多い」(吉田さん)から、実際の仕事の多くはODM(相手先ブランドの企画・生産)の毛色が強い。

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