
ここからは、国内ウィメンズリアルクローズ市場の有力35業態の打ち出しを紹介。ユニークな提案や商品戦略が際立った4ブランドは、ディレクターや企画責任者にインタビューした。ヤングカジュアルゾーンではボーホーロマンチックをいち早く・大胆に取り入れる一方で、百貨店やセレクトショップでは大人女性が敬遠しないよう、ディテールや小物などで取り入れ方を工夫する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月23日号からの抜粋です)
「リリー ブラウン(LILY BROWN)」
(マッシュスタイルラボ)
スポーティー&フォークロア、バッグも“盛る”
スポーティー&フォークロアをミックス。推しスタイリングは、膨らみのあるシルエットが目を引くペプラムトップスに、サイドラインの入ったスポーティーなショートパンツを合わせた。雑貨では、1万円台前半の単価を抑えたバッグの色展開を増やし、「“盛る”トレンドに合わせて、バッグチャームを強化してセット買いにつなげる」(吉野真由プレス)。
「ルーニィ(LOUNIE)」
(アイア)
ベーシックアイテムにシアー素材で奥行き
アイテム自体はベーシックだが、シアー素材をふんだんに取り入れる。MA-1は中綿入りで、春先の肌寒い日にも活躍する。中に着たリボンブラウスはミントとカーキの2色使いで奥行きがある見た目に。ボトムスには甘すぎないウオッシュドジーンズ、パンプスはメタリック素材をチョイスした。「継続トレンドのシアー素材は鮮度がポイント」(山本周平MD)。
「メゾンスペシャル(MAISON SPECIAL)」
(プレイプロダクトスタジオ)
“甘い”で終わらないガーデンロマンチック
チュールやレースは毎シーズン人気のアイテム。「今季は“甘い”だけではない、ガーデンロマンチックムードを打ち出す」(渡邊倫子ディレクター)。推しスタイリングも小花柄ブラウスとテーラードのセットアップで、甘さとマニッシュさをうまく掛け合わせた。今季は真夏に着られるアイテムの幅を広げ、投入時期も実需ジャストに寄せる。
「マルティニーク(MARTINIQUE)」
(メルローズ)
奥行き楽しむシアー同士のレイヤード
マリンテーストを取り入れ、ボーダートップスやニットアンサンブル、「トーマス メイソン(THOMAS MASON)」の生地を使ったシャツといった定番をアップデート。引き続きシアー素材は雑貨を含め豊富にそろえる。シアー素材同士を重ねて、奥行きを楽しむ提案を増やした。暑く長い晩夏に向けて、デザインTシャツやカットソー素材のワンピースなどを拡充する。
「マウジー(MOUSSY)」
(バロックジャパンリミテッド)
好調のデニムセットアップを夏まで連打
24年春夏に好調だったデニムを継続強化。セットアップの展開は春〜夏まで、素材やデザインを変えて打ち出す。ビンテージ加⼯のオーバーサイズジャケットに、⽴体感のあるバレルシルエットのパンツでモード感を加えた。デニムに合う軽やかなブラウスやキャミソールも充実させる。 25周年の来春夏は、さまざまなブランドとのコラボを予定。
「ムルーア(MURUA)」
(マークスタイラー)
パステルピンクをエッジィーに昇華
パステルカラーをモードに着こなす提案がユニーク。ミニ丈スカートやペプラムデザインのビスチェでトレンド要素を取り入れつつ、ブリーチ加工でエッジィに仕上げた。24年春夏はレザーやデニムなど「加工感が強めの素材が好評だった」(園部涼子PR)。引き続きこれらにシアー素材などを組み合わせてセンシュアルに提案する。
「レディアゼル(REDYAZEL)」
(バーンデストローズジャパンリミテッド)
立体感のあるフリルでフレンチガーリー加速
フレンチガーリーテイストで若い女性に支持を得るブランドらしく、フリルたっぷりの立体感のあるスカートで、トレンドのボヘミアン要素を取り入れた。MD全体としては重ね着アイテムを増やし、気温によって脱ぎ着できるコーデ提案を充実させる。来年3月にはブランド立ち上げ10周年に合わせ、1号店の渋谷109店をリニューアルする。
「リランドチュール(RIRANDTURE)」
(アルページュ)
フリル盛り盛りブラウスでムード全開
展示会場でも一番目を引いたのが、レースフリル盛り盛りのブラウスを主役にしたスタイリングだ。20代がターゲットのブランドならではの、思い切ったガーリー&ロマンチックな提案が光る。トップスに存在感がある分、きれいめのチノパンツ、控えめサイズのミニバッグとフラットパンプスを合わせ、やりすぎ感なくまとめた。
「ロンハーマン(RON HERMAN)」
(リトルリーグ)
きれいめ×ビンテージ 一部店舗では古着も
きれいめなスタイルに古着テイストのアイテムを混ぜ、カジュアルダウンする。強化アイテムは、シャツやポロシャツ、ポロニットなど。仕入れは、「キャサリン ハムネット(KATHARINE HAMNETT)」のように、変わらない価値を提案するブランドに注目した。また「レショップ(L’ECHOPPE)」の金子恵治とタッグを組み、一部の店舗では金子が厳選した古着を特設コーナーで販売する。
「ロペ(ROPE)」
(ジュン)
“ジャパンラグジュアリー”化が進行中
24年春夏以降、“ジャパンラグジュアリー”として上質化を推進。シグネチャーであり、オフィスニーズとしても根強いジャケットやトレンチコート、ドレスなどを25年春夏もラインアップ。編み込みのレザーハンドルなど、クラフツマンシップを盛り込んだバッグライン“トゥ”(参考価格13万〜24万円)も立ち上げ、一部店舗限定で販売する。
「シンゾーン(SHINZONE)」
(シンゾーン)
「ニューヨーカーがパリに滞在したなら」
「ニューヨークに生きる女性が一カ月パリに滞在したら」というストーリーから企画した。定番アイテムにレースやマリンボーダーなどのパリジャンを想起させるアイテムを組み合わせて提案する。強みのデニムは、シンプルなシャツやカットソーと合わせても様になるシルエットの美しさを追求した。レースのワンピースとの重ねが今季らしい。
「シップス(SHIPS)」
(シップス)
トラッド好きにも響くスポーティー
王道のトラッドにスポーティーテイストを混ぜて提案する。ラインパンツはニットできれいめに仕上げたり、ポロシャツの襟にさりげなくラインを配したりして顧客が挑戦しやすいよう工夫した。コーディネートアイテムとしてのシャツは、ショート丈からオーバーサイズまでバリエーションを強化した。シャツ同士を重ねて楽しむ提案で鮮度を出す。
「スライ(SLY)」
(バロックジャパンリミテッド)
グランジ×ガーリーをサブリナパンツで差別化
グランジテイストに女性らしいアイテムをプラスするのが今シーズンのテーマ。ビンテージ加工のフェイクレザージャケットを主役に、全面レースのフリルトップス、足元にポインテッドトゥミュール、立体的なクロシェ編みニット帽と、小物も駆使してバランスをとった。ランウエイでも見られたサブリナパンツも取り入れ、他ブランドと差別化する。
「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」
(ユナイテッドアローズ)
レトロプレッピーで定番アイテムに変化
「着る人それぞれが主役になるファッション」をシーズンテーマに掲げ、ルールに縛られないレイヤード提案に挑戦する。キーワードは、「レトロプレッピー」。シャツに襟付きのプルオーバーを重ね、透け感のあるスカートと合わせたスタイリングが代表例。日本の産地と組んで企画したセミオケージョン対応服もシーズンの柱になる。
「アンクレイヴ(UNCRAVE)」
(オンワード樫山)
ワークスタイルを「透け」「ハリ感」で洒脱に
ブランドならではの、オフィスから休日まで着回せそうな提案。トレンドのシアー素材やハリ感のある素材を、ブランドの強みであるセットアップで表現する。推しは透け感のあるジャカード素材を使用した、ビッグシルエットのシャツブラウスとマキシ丈のタイトスカートの組み合わせ。メリハリのあるシルエットが、クリーンでこなれた印象だ。
「アングリッド(UNGRID)」
(マークスタイラー)
気分が上がる“プラスワン”アイテムを強化
透け素材で全身を覆う大胆なコーデ。「ビスチェやボンネットキャップ、腰に巻くラップスカートなど、なくても済むが、あれば気分が上がる“プラスワン”のアイテムを強化する(西部結花クリエイティブディレクター)。ロマンチックなデザインのワンピースは、ブランドが得意とするデニムとの甘辛コーデで打ち出す。
「アンタイトル(UNTITLED)」
(ワールド)
ブラウンを野暮ったく見せない妙味
トレンドのブラウンのトーン&トーンでまとめたセットアップスタイルは、バレルパンツと7分袖のジャケットのモダンなバランスで、野暮ったく見せない。インナーの幾何学プリントのシアー素材カーディガンも抜け感をもたらしている。大人女性が華やかに着飾る提案として、ボリュームスリーブやリボンシャツやブラウスなどを取り入れる。
「ウィム ガゼット(WHIM GAZETTE)」
(パル)
クラフト感を残したビンテージスタイル
ビンテージ感を重視しながら、骨董品をたしなむような優雅な女性像をイメージした。辛口のジャケットはあえてバイカーショーツではずす。首元のビーズネックレスのように小物はキッチュさを大切にした。インド生産で手仕事の温かみを感じられるキルティングアウターやピンタックブラウスなども多く企画した。