昨年3月の出産を経て、フリーダ・ジャンニーニのマインドは確実に「エフォートレス(頑張りすぎない)」や「ピースフル(なんだか楽しい)」にシフトし、それが時代のマインドと呼応している——。産後間もなかった半年前に続き、「グッチ(GUCCI)」の2014-15年秋冬シーズンは、「理解」ではなく「共感」で味わうハピネスを感じさせた。
とは言え、「グッチ」はミラノ随一のシャープでエッジー、セクシーでモードなブランドだ。時には体を無理やりねじ込むくらいのコンパクトシルエットも必要だし、男性ならではの力強さや逞しさを感じさせるレザーアウターの提案も必要だ。しかし上述したように、時代は今、「エフォートレス」や「ピースフル」に価値を置き、おそらくフリーダもこうしたマインドに共鳴しているハズ。だからこそ「グッチ」は、シャープとソフト、日本語で言いかえれば柔と剛の双方をミックスし、提案しなければならないという、難しい課題を背負いクリエイションに挑んでいる。「ブランドらしく共感を誘う」という点においては、「カワイイ」系のブランドとして認知されている「マルニ」や「カルヴェン」より、そのハードルは高い。
しかしフリーダは、産後2度目となるメンズ・コレクションでも、そのハードルを見事に超えた。そのポイントは、絶妙な色使いと、固執とも言えるくらいこだわったお気に入りのスキニーボトムス、そしてボリュームたっぷりに仕上げたレザーやファーのトップスだ。
まず色使いは、他のミラノメンズとは大きく異なり、カラフル。ピンクやミント、スカイブルーなどの鮮やかな色さえ登場する。しかし、それだけでは単なる「カワイイ」に陥ってしまう。そこでフリーダは、こうしたパステルカラーをダルトーン(くすんだ色合い)に仕上げ、「カワイイ」だけではないニュアンスを組み込んだ。
シルエットは、基本的にトレンディなボリューム&タイト。上半身はほんのり広がるAラインのチェスターコートから、シャーリングをぜいたくに用いたボリュームあるトップス、ハリのある素材とボンディングしたであろうレザーで大きめに。一方の下半身は、フリーダが大好きなスーパースキニーのクロップド丈で統一し、「グッチ」のアイデンティティであるシャープなモードからかけ離れることのないよう配慮した。
アクセサリーは、バンブーハンドルのトートバッグを2つに折ってクラッチとして持ち歩いたり。レーザーカットしたレザーで作った付け襟、同じくレザーの組み紐をあしらったキャスケットなども提案した。