プーチ(PUIG)の上場後初年度となる2024年12月期決算は、売上高が前期比11.3%増の47億9000万ユーロ(約7472億円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が同12.3%増の9億6900万ユーロ(約1511億円)、純利益が同14.1%増の5億3100万ユーロ(約828億円)の増収増益だった。同社は、25年度の既存事業売上高の成長率は6〜8%と予想。ただ米国の関税の影響を織り込んではいたものの、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が2月26日に方針を示した25%レベルは想定外だったようだ。
米国の関税の影響を懸念
マーク・プーチ(Marck Puig)会長兼最高経営責任者(CEO)は27日、金融アナリストと報道関係者に対し、「ブランドの強さゆえ現在の粗利益率は高く、関税にはある程度対処できる。一方で25%レベルの関税が実施されたら、影響を再評価する必要があるだろう」と述べた。
業界には、関税が発動されれば勢いのあるフレグランス事業が上振れしづらくなるのでは?との懸念があるが、同氏は、「24年も、フレグランス市場は好調だった。ホリデーシーズンは若干減速したが、25年のフレグランスの見通しにも自信がある」と話す。また、プレステージメイクアップも勢いがある。「このカテゴリーで言及すべきは、コピー品の蔓延だ。我々はイノベーションや教育、クリエイティビティー、法的措置によりこれに対応している」。
プーチは、中期的には利益率が上昇し、自社ブランドへの継続的な再投資が可能になるとみている。25年には24年並みの利益率の改善を目指し、M&Aについては厳選する方針だ。一方でプーチCEOは、「当社は引き続き利益率の改善より売り上げの成長を優先する。このため、広告やプロモーションなどマーケティングに関する投資は維持する」と述べる。
部門別ではフレグランス&ファッションがけん引
「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」の“グッドガール”は昨年、女性用フレグランスの世界ランキングと米国で1位を獲得。その結果、同社は24年に一部の精選したフレグランスにおける世界的なマーケットシェア(累計販売金額によるブランドとフランチャイズのランキング※プーチ調べ)を拡大し、過去最高の11.5%(推定)を達成した。また「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」はプーチで最も急成長したブランドであり、“ル・マル”は男性用フレグランスの世界ランキングで3位を記録。「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」の“ワンミリオン”は、4位となった。
プーチのフレグランス&ファッション部門の24年の売上高は前期比13.6%増の35億3800万ユーロ(約5519億円)で、メイクアップ部門は同1.3%減の7億6300万ユーロ(約1190億万円)、スキンケア部門は同19.8%増の5億1600万ユーロ(約804億円)だった。需給ギャップやコピー品、「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE ILBURY)」“エアブラシ フローレス セッティング スプレー”の自主回収などがメイクアップ部門の成長を阻害した。スキンケア部門についてプーチCEOは、「ダーマコスメ(皮膚科学に基づいて開発された化粧品)は引き続き好調で、『ユリアージュ(URIAGE)』は新製品とフランチャイズの加速に支えられ2ケタ成長を達成した」と述べる。
地域別では、欧州、中東、アフリカ、北米、南米の主要地域で堅調な成長を遂げた。「他地域と比べて緩やかではあったものの、APAC(アジア太平洋)でも成長させた。同地域に新しく設立した子会社の効果が現れ始めている。当社のブランドの強さと魅力を考えれば、プレミアムビューティ市場(の一般的な成長率)を凌駕できると確信している」と25年度についても強気の姿勢を維持した。
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