PROFILE: ペア・ラスムセン/ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン社長

創業100年を超えるフランス発アルパインブランド「ミレー(MILLET)」は、人類初の8000メートル峰・アンナプルナ登頂(1950年)にバックパックが使われるなど、近代登山の歴史を支えてきたブランドの1つ。長らく創業家の手を離れていたが、21年に創業者の孫、ひ孫がブランドを買い戻した。老舗ゆえ、かつては中高年の登山愛好家に支持されるブランドというイメージも強かったが、近年は汗冷えを軽減するアンダーウエア“ドライナミック メッシュ”、独自素材の透湿防水シェル“ティフォン”など、革新的なアパレル製品をジャパン社主導で開発し、客層の若返りが進む。国内売り上げは21年からの3年間で倍増した。ジャパン社のペア・ラスムセン(Per Rasmussen)社長に好調要因と展望を聞いた。
WWD:ナイキ(NIKE)など一部を除き、アウトドアやスポーツメーカー各社は、コロナ禍以降好調が続いている。「ミレー」の日本事業はどうか。
ペア・ラスムセン ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン社長(以下、ラスムセン):コロナ禍直後の20年は(営業自粛/時短などもあって)売り上げは20%ほど落ちたが、21年には元に戻った。21年と比べて、24年の日本の売り上げは倍以上で着地している。コロナ禍では、若い世代でアウトドアアクティビティーに興味を持つ人が増えると共に、山小屋泊で高山に登るというのではなく、日帰りで低山ハイクをするといった山の楽しみ方が広がった。それにより、登山の間口が広がり、若い女性登山者も増えている。加えて、トレイルランニングという、従来の登山よりももっとスポーツに近い感覚のアクティビティーも広がっている。これらが当社の業績を押し上げている。国別でいうと、日本の売上高は本国フランスに次いで2位の規模だ。
国内売り上げの8割が
日本企画製品
WWD:吸水速乾機能で汗冷えを軽減するアンダーウエア“ドライミック メッシュ”は、登山好きの間では知らない人はいないくらい定着している。また、今春大幅アップデートをしたシェル“ティフォン”など、日本主導で開発した製品が存在感を発揮している。
ラスムセン:ジャパン社の売り上げの約8割を日本企画の製品が占めている。フランス本国もいい製品を開発しているが、ヨーロッパと日本とでは山が違い、標高も気候も違う。特に、日本の夏の湿度はヨーロッパにはないものだ。15年に発売した“ドライナミック メッシュ”と“ティフォン”だけでなく、超はっ水の軽量ウィンドシェル“ブリーズバリヤー”、繊維に虫を寄せ付けない特殊加工を施した“インセクトバリヤー”などの革新的な製品群は、ジャパン社が日本の素材メーカーと取り組み、素材からオリジナルで開発している。例えば“インセクトバリヤー”は、近年低山ハイクが広がったことで防虫ニーズが増していることを、契約している長野・白馬の山岳ガイドから聞き取って開発した製品だ。
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