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トランプ政権の相互関税、日本のビューティ企業に影響も 資生堂、コーセー、花王は慎重姿勢

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  • 資生堂、コーセー、花王のアメリカ市場の取り組み

アメリカのトランプ政権が明らかにした相互関税は、ビューティ企業にも影響を及ぼしそうだ。現在の化粧品の関税は0〜6%程度だが、日本に一律24%が課せられると化粧品でも価格競争力の低下は避けられず、米国市場で展開する日本ブランドには大きな打撃となる。原料やパッケージの一部をアメリカから調達している企業は、製造コストの上昇にも直結する。さらに、高関税を回避するために生産拠点の見直しや流通経路の変更を迫られるケースも出てくる可能性もある。資生堂とコーセー、花王に相互関税の影響やアメリカ市場での取り組みを聞いた。

事業に与える影響として花王が「トランプ政権の関税政策が弊社の事業に影響を与える可能性はあるが、現時点では具体的な影響について確定していない」と述べるように、資生堂やコーセーも事業への影響を精査中だ。影響が生じた場合、一般的に原料や資材、輸出時のコスト増などサプライチェーンの多岐にわたり影響があるが、コーセーは「北米向けの輸出だけでなく、両国における関税政策が刻一刻と変わることも想定され、しっかりとその動向を追う必要がある。現時点では対応方針を定めていない」とコメント。米国内での販売価格や流通の影響、輸出先や物流ルートなどの変更が生じるか否かも3社とも精査中だ。

政府も今後、協議していく意向を示していることから「現状を注視し、適切な対応を実施する」(資生堂)、「今後の動きを精査し、必要に応じて適切に対応する」(コーセー)、「詳細が確定次第適切に対応していく」(花王)と各社ともに慎重な姿勢を崩していない。とはいえ、米国市場はビューティ企業にとって成長ポテンシャルが高く、ブランド価値の向上にもつながる重要な拠点であることは変わらない。今後、関税の対象範囲や適用期間、さらには米国内での規制強化など、追加的なインパクトが生じた場合、各社はグローバル戦略を見直す必要が出てくるかもしれない。

資生堂、コーセー、花王のアメリカ市場の取り組み

アメリカ市場への参入は資生堂が最も早く1962年。同社が出資し初の海外の販売会社である資生堂オブハワイを設立。65年には資生堂コスメティックス(現資生堂アメリカズ)を設立した。現在は「シセイドウ(SHISEIDO)」や「ナーズ(NARS)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」「トリー バーチ(TORY BURCH BEAUTY)」「ドクターデニス グロススキンケア(DR.DENNIS GROSS SKINCARE)」のほか、「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PARFUMS)」「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」など複数のフレグランスブランドを展開する。2024年12月期の海外売り上げ比率は約70%で、アメリカ単独での売上高は開示がないものの米州事業が12%を占める。「ナーズ」や「トリー バーチ」が好調に推移しているという。

次いで花王が1986年に100%子会社である花王USAを設立。アメリカでの取り扱いブランドは「バン(BAN)」「ビオレ(BIORE)」「キュレル(CUREL)」「ジャーゲンズ(JERGENS)」「ジョンフリーダ(JOHN FRIEDA)」など。同社もアメリカ単独の情報を開示していないが、2024年12月期の地域別(日本・アジア・米州・欧州)売上高では米州が全体の約13%を占めている。

コーセーは、「アウェイク(AWAKE)」(現在休止中)を1997年からニューヨークの老舗百貨店、ヘンリ・ベンデルで販売するなど代理店を通じて製品を展開していたが、2015年10月に米国に販売子会社のコーセー アメリカを設立し、本格的な北米市場に参入した。現在、「コスメデコルテ(DECORTE)」「雪肌精(SEKKISEI)」「タルト(TARTE)」「アディクション(ADDICTION)」を展開する。2024年12月期の海外売り上げ比率は34.5%で、そのうちアメリカを含む北米市場は19.2%を占める。

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