?百貨店の高額品の売れ行きが活発だ。日本百貨店協会によると、2月の全国売上高のうち「美術・宝飾・貴金属」は前年同月比108.6%、3月も2ケタ増の店舗が多い。株高による資産効果が富裕層の背中を押していることに加え、「ティファニー」「カルティエ」「ハリー・ウィンストン」などの宝飾ブランドが円安と原材料の高騰を理由に10%前後の値上げを今春実施することを受け、駆け込み需要が殺到した。三越伊勢丹ホールディングの日本橋三越の宝飾・時計の3月販売は同約140%だった。そのうち 100万円以上の商品の売れ行きは点数ベースで 1.7倍に跳ね上がった。
?伊勢丹新宿店は宝飾・時計が 1月同113%、2月同116%、3月同140%と 3月6日のリモデルオープンも追い風になって尻上がりに伸びている。阪急阪神百貨店の阪急うめだ本店では、建て替え効果もあって 100万円以上の時計や宝飾品の販売点数が 2月に 2倍以上。そごう・西武全店で宝飾・時計は 1 〜 2月が同111 〜 114%、3月が同125%、4月上旬までが同135%と大幅に伸びた。「超富裕層による数百万円の商品購入の動きに加え、年収700万〜1000万円クラスの中間層が数十万円前後の腕時計を買うといった動きが顕著」(そごう・西武)という。
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?ただ、株高の上げ潮ムードが衣料品や雑貨などのボリューム部分にまで波及するかについて、各社トップの見方は慎重だ。3月に美術・呉服・宝飾が同112%、特選が同114%を達成した大丸松坂屋百貨店を傘下に持つ J. フロント リテイリングの山本良一・社長は「3月あたりはスプリングコートや柄パンツなどトレンド部分の動きは良かった。だがミセスや紳士服のボリューム部分がもっと売れなければ、地に足のついた回復とはいえない」と見る。2013年2月期で美術・宝飾・貴金属が同109%だった高島屋の鈴木弘治・社長は「高額品を中心に明るい兆しがあるのは確かだが、これを回復と見るのは時期尚早。雇用や給与が良くなり、個人消費に届くかどうかだ」と話す。百貨店にとって最大の懸案は、来年4月に迫った消費増税である。1997年の消費増税の際は、多くの百貨店が 95%前後の減収が 2年続く事態になった。まして今回は来年、再来年と 2段階にわたる税率アップになる。鈴木社長は「何もしなければ 5%ずつ下がる。それまでに一層の構造改革を進める」と気を引き締める。