「コム デ ギャルソン」の2013-14年秋冬コレクションは、千鳥格子やピッチの太いボーダー、それにピンストライプなどをのせた、メンズライクなセットアップで幕を開けた。ジャケットは、女性の胸を覆い隠すかのごとく大きなピークドラペル。その下に合わせたシャツは台襟の高いドレスタイプで、よくよく見るとモデルの体より若干大きいイメージ。Vゾーンからフェイクファーを覗かせたスタイルもある。そしてボトムスは、前後を強引に縫い付けることで無理矢理女性のウエストに引っ掛かるようにしたビッグパンツだ。
しかし、今シーズンの“キモ”は、シルエットそのものだけではないようだ。ほとんどすべてのセットアップには、ネオプリンをボンディングすることで形の維持を可能にした共布で作るバラのような飾りや、コブのようなボリューム、そしてミノムシさえ思わせる何枚ものハギレ。こうした付属を過剰に盛り付けることで、洋服本体のシルエットさえ破壊してしまうようなインパクトを与えている。セットアップは、時に刻まれ穴まで開け、モチーフの規則的な配列を強引にねじ曲げている。
テーマは、メンズウエアをベースとした「性差のクロスオーバー」なのか?それとも強引に変化を与えることで表現した「ギャルソン流オプティカルアート」なのだろうか?正直、そのどちらもピンと来ない。
考えられるのは、「『前衛』であるための“過剰”」。今シーズンは、前衛であり続けるために洋服を切り裂き、加え、そして変形させた。何かを求めるためにアヴァンギャルドになったのではなく、アヴァンギャルドになるために何かを加えた、そんな気がしてならない。
その証拠に、ブラック&ホワイト一辺倒だったコレクションは、突如1970年代調のサイケカラーに包まれ、第2パートがスタートするような印象さえ与えた。しかし、カラフルな洋服はほんの5体で終了。その後、音楽が突然途切れ、唐突なフィナーレを迎えている。これもまた、アヴァンギャルドであるための演出に思えて仕方ないが、どうなのだろうか?
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