20代女性に多くのファンを持つマッシュスタイルラボの「スナイデル(SNIDEL)」。全国主要ファッションビルや百貨店に構える店舗の中で、年間売上高6億円以上と最も売り上げる一番店はルミネ新宿2店だ。2015年にブランド設立10周年を迎え、16年9月には新コンセプトデザインに改装リニューアル。オープン初日にはブランド過去最高の4089万円を売り上げた。同店のスタッフはアルバイト含め21人。店長を務めるのは28歳の狩野有美さんだ。人気ブランドの一番店のリーダーとして、どのようにお客さまとコミュニケーションをとり、スタッフ育成・接客を行い、販売やモチベーションアップにつなげているのか。彼女のスタッフ育成術や接客マイルールなどを聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):マッシュスタイルラボに入社したきっかけは?
狩野有美さん(以下、狩野):高校卒業後、アパレル企業に入社して、OL系のブランドの販売員をしていました。その後もまたアパレルに進むか迷ったのですが、特に資格を持っていなかったので、再度経験のあったアパレルに進むことにしました。正直、「スナイデル」のことはよく知りませんでした。買ったことはなかったし、好きなモデルの私服で名前を見かけていたくらい。でもお店に行くと、内装がきれいでついつい入ってみたくなる印象でした。それから、ブランドのこと、企業のことを調べると「ジェラート ピケ」と同じ会社なんだと知って、受けてみようかなと思いました。
WWD:もともとファッションには興味がありました?
狩野:服が好きという気持ちはずっとありました。「スナイデル」はあまり知識がないところからスタートしましたが、人気ブランドなので憧れが持てたし、毎日納品が来るたびにワクワクして楽しいという気持ちが高まっていきました。プライベートではどちらかというと聞き役なのですが、店舗でも地方から来られた方や年が離れた方など、普段会わないような方々と話す機会も増え、ファッション以外の話もできたりして、自分自身勉強になることも多いです。
WWD:販売員の仕事内容とは?
狩野:一番の仕事は笑顔でお客さまを迎えることです。でも販売は表では華やかな仕事に見えても、店舗裏では納品された大量の箱を女の子たちがせっせと開けて、重いコートなどを検品して、ストックに詰めて、陳列して……実は結構な体力仕事なんです。店頭でかわいい服を着ているスタッフも体力使っているんですよ(笑)。
WWD:スタッフの指導・育成はどうしていますか。
狩野:販売未経験の子には、まず企業方針やブランドコンセプト、店舗のビジョンなどを理解してもらえるように説明します。私も転職時、販売経験があっても不安でした。仕事を始める店舗はすでにスタッフの輪ができているし、同じアパレルでも販売方針やタグの内容が違ったりするので、基本的な流れやルールなどを伝え、お店全体で迎えてあげるようにしています。指導や育成には、若手の先輩とペアを組む“シスター制”を導入して、“お姉さん的存在”をつくって相談しやすい環境を作っています。ブランドが好きで憧れて入ってきてくれる若い子の中には、体力仕事になかなか慣れなかったり、思っていた華やか仕事でなかったりという理由で、早々に辞めてしまうこともあります。20人近いスタッフ全員に、私が直接話を聞くことはなかなか難しいので、副店長2人とスタッフの状況やモチベーションを共有したり、月末の棚卸しの際に1~2時間の個人ミーティングを設けたりしています。業務中はゆっくり話せる時間があまりないし、ランチに誘うのも気を遣わせしまうので、仕事の時間を使うことで、腹を割って話してくれるかなと思っています。正直、今の若い子はナイーブで、叱ったからといって素直に聞いてくれるわけではないので、それぞれに合わせた伝え方やフォローの仕方で細かく指導しています。
WWD:ルミネ新宿は他店に比べ、入店客数も多いですが、何か対策をしていますか?
狩野:セールや週末などは、スタッフの人数以上のお客さまが店内にいらっしゃることが多いので、レジと試着室、店頭とフォーメーションを整え、スタッフ同士のオペレーションを臨機応変に組めるようにしています。混雑時でも1スタッフ1お客さまで対応できたらいいですが、そうすると新しく入って来られたフリーのお客さまの対応ができないので、どのお客さまにも気配りもできるよう心掛けています。お店にいらっしゃるお客さまは、少しでも何かが気になっているので、声をかけないのは失礼。お店に来てくださるから、販売につながっている。そういった会社の教えもあるので、十分な接客ができなくても最大限のサービスをするようにスタッフに伝えています。
WWD:店長職に就き、自身で心掛けていることは?
狩野:スタッフ育成においては、店長になってから、みんなに楽しく働いてもらうためにもそれぞれの得意なことに係をつけるなど、一人ひとりが活躍できる場を設けてあげたいと考えています。仕事は楽しくないと続かない。積極的にスタッフの声を聞いて、不安を取り除き、仕事に対しての楽しさを感じてもらいたいし、お店の雰囲気も良くなると思います。彼女たちの士気を上げ、やる気を出させることは、きっと私の声のかけ方や伝え方でも変わることだと思うので、積極的に明るい店内環境を作り、お客さまをお迎えしたいと思っています。
WWD:自分の性格はどう分析していますか?
狩野:すごくネガティブです(笑)。心配症なところがあるので、気になることや分からないことはすぐに調べようとしますね。
WWD:接客におけるマイルールは?
狩野:プライベートでも聞き役が多いので、お客さまの話や要望をよく聞くことは意識しています。提案もそうですし、自分のファンになってもらうためにも、まずはお客さまの話を聞いて、希望のスタイルをきちんと勧められるように心掛けています。例えば、試着の際もお客さまの声や動き、目線を見て、何を気にされているのかを感じ取るように。あとは、天気予報も毎日細かくチェックして、提案の仕方を変えたり、会話の話題にしたり。会話が苦手なお客さまとも、情報交換できるようにしています。
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