「ディオール(DIOR)」のファッションやレザーグッズを扱うクリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)がLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON 以下、LVMH)の傘下に入るというニュースは、アナリストや投資家の好感を受け、4月25日のLVMH株の終値は前日比3.9%増の223.15ユーロ(約2万6554円85銭)に上昇した。
「今回の買収により、LVMHは『ディオール』というビッグネームを獲得し、また『ディオール』もすでにLVMH傘下にある高収益な香水ビジネスとの統合で収益バランスが良くなる」とバークレイズは分析する。
「ディオール」はこの5年間で売上高を20億ユーロ(約2380億円)と倍増させており、LVMHのファッション部門の中では「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」に次ぎ、「フェンディ(FENDI)」を上回る。買収提案額は65億ユーロ(約7735 億円)で、EBITDAの16.5倍。この金額にはアベニュー・モンテーニュ(パリ)やニューボンド・ストリート(ロンドン)、銀座などの旗艦店8店の不動産やフランスやイタリアにあるバッグやシューズの8つの工場も含まれる。傘下入りにより、人事や経理、ITチームなどLVMHのサポートを受けるようになるが、世界5000人の従業員は継続して雇用する。
今年ブランド創設70周年を迎えた「ディオール」は、ベルナール・アルノー(Bernald Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)が1984年に破産したテキスタイル会社、ブサック・サンフレールを買収するに伴い取得。これまでクリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)社が100%子会社としてクリスチャン ディオール クチュールを保有し、その後設立されたLVMH株の41%も保有してきた。
「ディオール」をLVMH傘下に収めるにあたり、アルノー会長兼CEO率いる投資会社グループ アルノー(GROUP ARNAULT)は、現在74.1%の株を保有するクリスチャン ディオール社の残りの株の購入を提案。購入額は121億ユーロ(約1兆4399億円)にも上る。
なお、88年から「ディオール」の経営に携わるシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)=クリスチャン ディオール クチュール社長兼CEOは「今回の買収は新たなチャレンジだ」と語り、近日中に引退する予定はないことを明らかにした。