パリを拠点に活動するクリエイターデュオのツェツェ・アソシエ(TSE&TSE ASSOCIEES、以下、ツェツェ)のデビュー作である“四月の花器”が、誕生25周年を迎えた。“四月の花器”とは試験管21本をつなげたツェツェの代表作。ツェツェはカトリーヌ・レヴィ(Catherine Levy)とシゴレーヌ・プレボワ(Sigolene Prebois)のデザイナー2人組で、1984年、パリの国立工芸学院で出会い制作活動をスタートした。5月には、パリのセレクトショップであるメルシーでデザイナー2人の友人のアーティストらによる“四月の花器”へのオマージュ作品展「マスカレード(仮面舞踏会)」が行われた。日本では表参道のH.P.DECOで6月22日~7月6日まで、記念イベント「マスカレード・トーキョー(仮面舞踏会 東京)」を開催。マニッシュ・アローラ(Manish Arora)やナタリー・レテ(Nathalie Lete)、フレデリック・モレル(Frederique Morrel)、河原シンスケなど、さまざまなクリエイターの27作品を展示する。同展を機に来日したツェツェの2人に“四月の花器”のイメージソースやクリエイションのスタイルについて聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):“4月の花器”のインスピレーション源は?
カトリーヌ:日本の生け花よ。生け花は、花だけじゃなくて茎や枝も見せられるでしょ。試験管で遊んでいて、一輪挿しにちょうどいいなと思ったの。全ての花器の共通点は、使う人に花と遊ぶ楽しさを知ってもらうということ。そうすれば花により価値を与えられると思うから。
WWD:試験管21本をつなげた理由は?
シゴレーヌ:最初は試験管の数が違うものを売ろうかと思ったけど、21本が理想のバランスだと思ったから。フランスでは通常、花を10本単位で販売するのだけど、それを全部一緒に生けるのではなくて、長さを変えたり、葉っぱや茎を見せて1本ずつの個性を楽しめるようになっている。
WWD:なぜ“四月の花器”という名前にしたか?
カトリーヌ:フランスではエイプリルフールのことをポワッソン・ダヴリル(4月の魚、POISSON D′AVRIL)と言うの。4月1日に、子どもらは、魚の絵を描いて、こっそり友達とかの背中にくっつけて遊ぶのよ。ウインクのような遊び心と自由なエスプリを表現したかったから。
WWD:東京の「マスカレード」展を見た感想は?
シゴレーヌ:よく考えられた素敵な展示ね。日本のファンへの感謝の気持ちが表現されていると思う。
WWD:ツェツェのクリエイションのスタイルとはどのようなもの?
カトリーヌ:ラグジュアリーではなく、明るく親しみやすいスタイルよ。高価な素材を使っていても決してスノッブにならず、シンプルなものが多いわ。実用的で使いやすい点も大切ね。私たちの作品はいろいろなモノとミックスしても相性がいいし、さまざまな空間で使えるわ。
WWD:デザインやクリエイションのモットーは?
シゴレーヌ:とにかく誠実であること。何をデザインするにしても、私たち自身が好きであることが大切だと思う。全てのクリエイターが自分の好きなモノだけ作っていれば、世界はもっとハッピーになるはずだと思うわ。新しいものを作る喜びを使う人と分かち合える事が一番大切。デザインとは、好きなものを分かち合うために存在すると思う。それは、ある意味、作品自体が無声の言葉のようなものね。
WWD:ツェツェという名前はどこから?
カトリーヌ:ツェツェバエが元よ。さされると睡眠病になる恐ろしいハエなんだけど、子どもの頃は、“眠り=夢”を見させてくれるハエと思っていたの。素敵な物語だし、響きもいいからツェツェにしたのよ。
WWD:今後の予定や、新たにチャレンジしてみたいことは?
シゴレーヌ:いろいろなプロジェクトが同時に進んでいるから、まるでお鍋を複数火にかけてお料理している感じよ。まず、ロサンゼルスでも「マスカレード」展を開催するわ。いいものを作れば、協業するパートナーが私たちのところに来てくれる。彼らが我慢できないくらい素敵なものを作りたい。
WWD:ツェツェにとって日本とは?
シゴレーヌ:日本は私たちにとって特別な国。日本に来ると、私たちはまるでモノが何もなかったソビエト連邦から来た気分になるわ。日本には美しい日常品があふれているから、全部買いたいと思っちゃう。アルミの洗濯ばさみは世界中で一番美しいプロダクトだと思うわ。巣鴨に行ってお鍋や食器などいろいろ買うけど、何と言っても地下足袋は外せない。スーツケースで運べる限り買い物して帰る。