12月23日に公開を控える映画「マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年」を一足早く鑑賞した。マノロ・ブラニク(Manolo Blanik)は、スペイン領カナリア諸島出身のシューズデザイナー。1970年初頭のデビュー以来、ダイアナ妃やリアーナ(Rihanna)ら多くのセレブの足元を飾るシューズを手掛けてきた。
興味をそそるタイトルは、幼少期に神秘的な青色のトカゲのためにチョコレートの包み紙で作った靴が、マノロの靴作りの原体験だったことに基づいている。そんな幼少期のエピソードと当時の写真で映画がスタートし、デビュー目前の60年代以降を周囲の著名人たちの証言を織り交ぜて綴っていく。パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の娘パロマ(Paloma)との五月革命下のパリでのエピソード、デビュー当時の失敗談、70年代にファッションシーンとして憧れの的であったロンドンでの日々、80年代のアメリカでの活躍。アナ・ウィンター(Anna Winter)米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長や写真家のデビッド・ベイリー(David Beiley)らの数々のコメントによって、マノロ像がみるみるうちに脳内に立ち上がってくる。
もちろん、マノロの実像を的確に観客に伝えるのは、美しい仕立てのスーツをまとって話す彼自身の姿だろう。穏やかでエレガントかと思うと、時に素っ頓狂な声を上げておどけてみせる。名声に彩られたキャリアとは裏腹に至って謙虚な姿も印象的だった。
劇中、最も胸を打ったのは、94年にパリのシュルンベルジェ邸で行われた「ジョン・ガリアーノ(JOHN GALLIANO)」のショー映像。息を呑むほど美しいコレクションピースの足元を飾ったのは全てマノロが手掛けたシューズだった。ショー映像の前後には、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」クリエイティブ・ディレクターと再会し、談笑するマノロも映し出される。
シューズのデッサンを描く様子や、マノロ自ら工房で木型を削る姿も見所の一つだ。登場するシューズはどれも個性的で美しい。本作を観れば、それがマノロの人柄そのものであることに気づくはずだ。
■マノロ・ブラニク トカゲに靴を作った少年
上映時間:89分
監督・脚本:マイケル・ロバーツ
出演:マノロ・ブラニク、アナ・ウィンター、リアーナ、パマロ・ピカソ、シャーロット・オリンピア、イマン、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・ガリアーノ、ソフィア・コッポラ、ルパート・エヴェレット
配給:コムストック・グループ
配給協力:キノフィルムズ
上映館:新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー