中国第2位のEC企業、JDドットコム(JD.COM)が10月10日、ラグジュアリーECサイト「トップライフ(TOPLIFE)」をスタートする。ファッション、アクセサリーから健康用品やビューティ、家具、電化製品まで、あらゆるラグジュアリー製品を網羅。出店するラグジュアリーブランドがオフラインの店舗と同様にブランディングできる環境を整える。
「ラペルラ(LA PERLA)」「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」「リモワ(RIMOWA)」「トラサルディ(TRUSSARDI)」などの出店がすでに決定しており、今後数週間以内に他の出店決定ブランドは発表される。中には中国でのECが初となるブランドもあるという。
リチャード・リュー(Richard Liu)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「『トップライフ』により、世界中のラグジュアリーブランドが、オフラインの店舗でしか提供できなかった本物の贅沢なショッピング体験を中国全土の顧客に直接提供できるようになった。『トップライフ』はオフラインの贅沢なショッピング体験を、EC上に反映させることを目指している」と話す。
その実現のため、JDドットコムは、ブランドがECのデザインをコントロールできるようにする他、ファッションコンサルタントや24時間対応のカスタマーサービスを用意している。また、「トップライフ」を通じて販売される商品は、無塵の密室で厳しい温度・湿度コントロール管理のもと、ロボットを備えた倉庫に保管される。
中国最大手のEC企業アリババ・グループ(ALIBABA GROUP以下、アリババ)は完全招待制のラグジュアリー・プラットフォームを8月にローンチしたばかりだ。また、中国最大手ラグジュアリーEC企業のSECOO.COMも9月にニューヨーク株式市場に上場。JDドットコムはそれらを追う形になる。
コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー(Bain&Co.)が9月に発表した調査によれば、中国のラグジュアリー商品の全購入額のうち、EC上で購入されたものはわずか8%だった。だが今後ミレニアル世代、中流階層、働く女性の支出増加により、この比率は大きく飛躍するだろうと見ている。
CLSAのアナリスト、マリアナ・コウ(Mariana Kou)は「時間はかかったが、『ネッタポルテ(Net-a-porter)』や『マイテレサ(Mytheresa)』のようなECプラットフォームに出店するブランドが増えている。ブランドがオフラインで卸売業者を選ぶのと同じようにECに出店してもらうには、ブランドが満足するポジショニングや商品の見せ方を整える必要がある。特に中国のECは商業的だったり販促的なイメージがあるので、グローバルなラグジュアリーブランドの心をつかむには、戦略的なポジショニングやブランディングが必要」と語る。
さらに、消費者情報機関ボモダ(BOMODA)のブリアン・バックウォルド(Brian Buchwald)CEOは、正規品も非正規品も一緒くたに販売する第三者(たいていブランドの正規販売代理店ではない独立系の小売業者)が根強く存在しているのが問題だと見ている。
また、従来のプラットフォームとは別にラグジュアリープラットフォームを持つことが、消費者にラグジュアリー商品を買わせるのに必ずしも有効ではないとの見解だ。「アリババのTモールに出店しているブランドがあっても、同社が運営する別のECサイトのタオバオでは同じブランドの非正規商品が販売されており、同社のラグジュアリービジネスに対する姿勢や非正規品撲滅への取り組みが形骸化している。さらに、アリババもJDドットコムも核の顧客層はマスだ。マスなマーケットこそ両社の得意分野で、その成長と市場価値の引き上げに貢献してきた。しかし、マスな商品とラグジュアリー商品の両方を提供することは、両社に落ち度はなくてもその可能性に制限をかけてしまうかもしれない。さまざまなブランドが隣り合うショッピングセンターのように、さまざまなブランドが混在する市場はその性質上、ラグジュアリーな要素を取り込む妨げになる可能性がある」と説明する。
バックウォルドCEOは、ニッチだが非常に成長している「微信(WeChat)」のようなメッセンジャープラットフォームに注目している。「現時点では、多くのラグジュアリーブランドがポップアップストアや期間限定品、時間制限のあるキャンペーンをテスト中だ。これらのキャンペーンが成功すれば、今後より広まっていくことが期待される」とバックウォルドCEOは話す。