フーフー(FOUFOU)」を立ち上げる" data-image-index="1">
PROFILE:1990年生まれ。大学卒業後、量販店販売員として1年間勤務し、14年に文化服装学院(Ⅱ部服装科)に進学。昼間はアパレルメーカーの生産管理をしつつ、夜間部に通学。在学中の16年に「フーフー(FOUFOU)」を立ち上げる
「ユニクロ(UNIQLO)」や「ザラ(ZARA)」などのファストファッションが勢いが増す中、自らを“ニューウェーブなファストファッション”と位置付け、若年層の人気を着々と得ているウィメンズブランドが「フーフー(FOUFOU)」だ。同ブランドは2016年にデザイナーの高坂マールが“健康的な消費のために”EC専売のハンドメードブランドとしてスタート。現在、1万円以下の価格帯の商品を月2型、合計で約250着生産しているが、商品は毎月完売。まだまだ小規模ながら、これからは徐々に生産数を増やし、リアル店舗の出店も考えているという。高坂デザイナーの考える“健康的な消費”、そして“ファストファッション”とは?
WWDジャパン(以下、WWD):ブランド設立のきっかけは?
高坂マール「フーフー」デザイナー(以下、高坂):文化服装学院(以下、文化)に在学していた時「自分と比べて、周りの学生の人はいい服を作っているな」と感じていました。そこで重要になってくるのは「作った服を欲しいと思ってくれる人たちにどう届けるのか」ということ。自分が作った服を「いいな、欲しいな」と思ってくれる人達は世界中のどこかには必ずいる。あとはその服が届くまでの道筋をしっかり考えれば誰でもできるのかな、と思ったんです。それがきっかけかもしれません。
WWD:“ニューウェーブなファストファッション”と「フーフー」を位置付けたのはなぜ?
高坂:最初の頃は“スーパーチープ”とか言っていました。キャッチーな言葉が思い浮かばなかったので(笑)。ただ、ブランドを始めた時からファストファッションを意識していました。かっこいい、革新的なファッションは個人的にはちょっと違う。日常をグレードアップするような服は「コモリ(COMOLI)」や「オーラリー(AURALEE)」などから既に出ている。そういった既存ブランドの隙間から出てきたものが「フーフー」なんです。程よくオシャレで、そこそこ質がいい。しかも安い。そして「エバーレーン(EVERLANE)」のように生産背景の情報を発信してもいます。それが「フーフー」の考える“ニューウェーブなファストファッション”です。
WWD:“健康的な消費”というブランドのコンセプトもそういった考えから来ている?
高坂:そうですね。結論から言うと「服って今やそこまで必要ないし、誰も興味ないかも」と思ったのがきっかけです。多分、SNSの発達が大きな理由なんだと思います。昔は服装とかの見た目が周りと違うことが個性だと考えられていた。でも、今はネット上に自分の個性を出せるアカウントをみんなが持っている。自分の描いた絵や撮った写真とかをネット上で披露できる。だから別に外見で個性を出す必要がないんですよ。服にお金をかけるよりもナイトプールとかの方がインスタ映えも狙えるし、楽しい。でも、「ユニクロ」や「ザラ」だけでは満足できない。そういった人たちが買えるような服を売りたい。消費者にとって最高な服にはなれなくても、最適な服にはなれればいいと思っています。
WWD:一般的にはファストファッションは短期間で服を大量に生産するが、いずれは「フーフー」もそうしていきたい?
高坂:大量生産、というほどではないですが委託する工場を増やしていくことは考えています。ブランドを始めた1年前よりも規模も少しずつ大きくなってきて、やれることも増えてきたので。ただ、短いサイクルで大量生産、といった定義は業界から見た考えなのかな、と思っています。消費者の目線で見たファストファッションって安くて、使い勝手が良くて、品質はそこそこ。そしてパッと買いに行けるもの。業界の視点だけで服を作っていくとお客さんとの間に認識のズレが生まれてしまうような気がしています。そうではなくて、消費者の視点に立ちつつユーモアを加えながらモノづくり側の考えを伝えていく。それを「フーフー」では心がけていますね。
WWD:商品の原価率は?
高坂:モノにもよりますが、50~70%ですね。その代わり卸をやっていないですし、配送も梱包などを簡素にするなどして他のコストを抑えています。逆に「そういったことをしているから安く服をお届けできますけど、いかがでしょうか?」とお客さんには提案をしています。
WWD:なぜウィメンズの商品のみを展開するのか?
高坂:女性の服の方が客観的な視点で見ることができるからです。あと、男性って服のこだわりが強くて、新しいものにあまり手を出したがらない気がするんですよね。実際、僕も同じような服ばかり着ていますし(笑)。その点女性の方がいいな、と感じたらすぐに動く。そして着る服1つで印象がガラッと変わる。面白いですよね。
WWD:EC専売のようだが、実店舗を出すことは考えている?
高坂:現在も“ノーウェア ストア(No Where Store)”という、定期開催の実店舗を出しています。文字通り“どこにもない店”というコンセプトで、事前に予約した人だけに住所を送って来店してもらうという仕組みになっています。ネットは誰にでも開かれているから、リアルではあえて一部の人に絞ってやってみたら面白いんじゃないかな、というアイデアです。いずれは店員がいない常設店とかも出してみたいですね。
WWD:今後ブランドをどうしていきたい?
高坂:今までと変わらず、地道に淡々とブランドを続けていきたいです。ブランドを拡大する、とかそういったことは考えていなくて、続けていく中で変化しなければいけないところは変化しつつも、軸はぶらさない。それが結果拡大につながるかもしれない、くらいに考えています。それよりも重要なのは「服が売れない」という現実の中でファッションを楽しむ1つの選択肢として「フーフー」がある。そういう存在になれればいいな、と思っています。