オープンから4年で5店舗を展開し、業界内外からの注目を集めて“今最もイケてる美容室”といわれる「オーシャントーキョー(OCEAN TOKYO)」。そのトップを務める高木琢也、中村トメ吉の両代表と、「オーシャントーキョー ハラジュク」の三科光平・代表の3人が、10月14日から施術料金を値上げした。それぞれ7000円台だったカット料金が、高木代表と中村代表が1万2000円、三科代表が1万円になった、かなりインパクトのある料金改定だ。
日本のヘアサロンの施術料金は、欧米のトップサロンと比べて格段に低く、以前から問題視されてきた。しかし、どのサロンも顧客離れを恐れてなかなか値上げに踏み切れず、大きな料金変動がなく現在に至っている。これまでも、現場に立つことが少なくなったオーナーが値上げに踏み切るケースはあったが、今回のように第一線でサロンワークをこなす美容師が値上げするのはごくまれなケース。しかも「オーシャントーキョー」のメーン顧客は、レディスよりも単価が低いとされるメンズで、さらに学生や20代の若い層が多いということで業界を騒がせている。そこで、話題の3人に料金改定の真意と、値上げを実施してからの顧客の反応について聞いた。
WWDビューティ(以下、WWD):このタイミングで料金改定を行った理由は?
中村トメ吉「オーシャントーキョー」代表(以下、中村):理由は主に2つある。1つは、お客さまに提供する価値に誇りを持って仕事をする美容師を増やしたかったからだ。私たちは、これまでやってきたこと、積み上げてきたことに自信があって、胸を張って最高の技術を提供してきたと言える。その価値や費やしてきた時間も含めて、料金以上のものを提供できると判断し値上げに踏み切った。そうした姿勢を示すことで、共感してくれる美容師が増えればと考えている。
WWD:もう1つの理由は?
中村:もう1つは、オープンから4年でブランドイメージが定着してきて、新たなチャレンジをする土台が整ったからだ。例えば、店舗によってブランディングとターゲット層が違うとか、お客さまが担当美容師を自由に替えられるとか、そうした特徴が浸透してきた。それに加え、私たちが大切にしてきた本質的技術と、お客さまと心と心で向き合って髪型を提供していくという価値観が、1年目のアシスタントまで共有できるようになった。そうした土台が整ったタイミングが、今だったということだ。
WWD:カット料金を1万2000円にした理由は?
高木琢也「オーシャントーキョー」代表(以下、高木):日本では、カット料金6000円でも高いといわれることがある。しかし僕は、髪型は毎日付き合っていくものだから、その価値をもっと高めた方がいいと考えている。学生であれば制服、社会人はスーツと基本の服装は決まっているけれど、髪型は自由に変えられる。その髪型を僕たちが作ることで、心の満足感まで提供することができる。そのことを表現し、価値を感じてもらうための手段の1つが料金だと考えている。そこで導き出したのが“いいTシャツを1枚買うくらいの高級感”だ。本来ならば3万円くらいにしてもお客さまは来てくれると思ったが、あまり遠い存在にはなりたくない。なので、“他の買いたい物を少し我慢することで手が届く料金”に設定した。