“グランピング”をテーマにした雑誌「グランプ(Glamp)」(グランプ刊)が「ホットドックプレス(Hot-Dog PRESS)」のムック版として講談社から9月28日に発売された。海外のコレクションやイベントなどでも“グランピング”がキーワードとして浮上しているうえ、10月30日に“日本初のグランピング・リゾート”と銘打つ「星のや富士」が河口湖畔に開業したこともあり、ビジネスやマーケティング的にも注目を集めている。吉村司「グランプ」編集長に創刊の経緯と狙いを聞いた。
雑誌「グランプ」が生まれた背景
吉村編集長は1990から2010年まで20年間、マガジンハウスで「ハナコ」関西版を手掛けてきたベテラン編集者だ。休刊を機に編集プロダクションを営みながら、世界中を放浪するデザイナーと淡路島にキャンプ場「FBI」を5年前に開業した。「アウトドアやキャンプを楽しむ人口は増えつつあったが、野生そのものの中で過ごすというよりも、『トイレがキレイ』だったり、『女の子同士でも気軽に楽しめる』『ワインとシャンパンでバーベキュー』など、都会と同じような快適さの中で過ごせる環境を整えることで人気が高まっていった。こういうスタイルを『グランピング』と呼ぶことを1年前に知り、グランピング・スタイルを発信する雑誌を作りたいと考えた」と振り返る。「昨年は説明しても分からないとか疑問視する人が多かったが、今年に入って一気に理解者が増え、一緒にムーブメントを作ろうという機運が高まっている」という。
“グランピング”とは“、グラマラス(Glamorous)”と“キャンピング(Camping)”の造語だ。「ラグジュアリー・ブランド、特にヨーロッパ系ブランドはライフスタイルを起源としたものが多く、ブランドのDNAと近いものがある」と吉村編集長。創刊号のメイン特集も「グランピングの歴史はルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)とともに始まった」と「『星のや富士』完全レポート」で、星野佳路・星野リゾート社長は「7年ほど前に海外でグランピングの言葉を知り、5年間かけて計画し、開業にこぎつけた」「私はグランピングはラグジュアリーでなくてはならない、という考え方だ」とインタビュー中で答えている。クライアントには「ポルシェ(PORSCHE)」のSUV“カイエンSE-ハイブリッド”や、東急電鉄の会員制タイムシェアリゾートを軽井沢や那須、伊豆、那須などで展開する「東急ビッグウィーク」などが名を連ねる。特に「ポルシェ」の出稿は、従来の車マニアや「ポルシェ」マニアなどとは異なる、新しいニーズの発掘を期待してのもの。金山明煥・東急ビッグウィークステーション社長も、「ハード重視ではなく、“エクスペリエンス・デスティネーション”をキーワードに目的を楽しむスタイルを提唱し需要を喚起すれば、マーケットは広がるはず。欧米からの時間消費型のインバウンドでもチャンスがあるし、インターナショナルに通用する価値感だ」として、富裕層向けビジネスの重要キーワードになると断言する。
「グランプ」の次号は2016年3月に「グランピング・ファッション クローズアップ!!」としてファッション特集を予定。以降、年4回の季刊誌化を図る。オープンカフェや、百貨店の屋上など「ラグジュアリー・ブランドなどと組み、都会の中でもグランピングをテーマにしたイベントなども企画したい」と吉村編集長は意欲的だ。