フランス人アーティストのナタリー・レテ(Nathalie Lete)が11月、新作アートブック「イン・ザ・ガーデン ・オブ・マイ・ドリームズ(IN THE GARDEN OF MY DREAMS以下、ドリームズ)」の出版記念で来日しました。私がナタリーに初めて会ったのは昨年秋、表参道の店舗ル・モンド・ドゥ・ナタリー(以下、ル・モンド)がオープンした時です。ル・モンドは、ナタリーの世界観を表現した世界で一つのお店。中に入ると、まさに名前通り“ナタリーの世界”が広がっていました。ベッドルームやリビングルーム、キッチンから構成される家のような空間は、ナタリーのカラフルでのびのびとしたアートやコラボレーション商品で埋め尽くされ、私はポエティックでシュールで、でもどこかユーモラスな彼女の作品にすぐ魅了されました。
今年は、フランスのスーパーマーケットであるモノプリ(MONOPRIX)との大々的なコラボや「ドリームズ」の出版で多忙だったナタリーですが、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)がインスピレーションを受けたというバンビの原作「バンビ ル シュブルイユ(BAMBI LE CHEVEREUIL、以下バンビ)」の挿絵も手掛けています。「バンビ」の出版を記念して、「ミナ ペルホネン(MINA PERHONEN)」とのコラボレーションでバンビのぬいぐるみの製作も行いました。来日したナタリーに、完成したアートブックやコラボ、自身のファッションなどについて聞きました。
自由に好きなものだけを集めた庭
WWDジャパン(以下、WWD):「ドリームズ」の制作にかかった時間は?
ナタリー・レテ(以下、ナタリー):約2年半前にアメリカの出版社から「作品集を出さないか」という話があった。その後フランスでも同じ本を発行したいとオファーがあり、ほぼ同じタイミングで出版することができた。イメージした通りの仕上がり。でも、息子から「各作品のサイズや日付がないよ」と指摘されて、ドキっとしたわ。私や出版社より、息子の方がプロだって思った。
WWD:全てこの作品集のために描いたもの?
ナタリー:200点のうち100点はこの本のために描いたもので、それ以外は2014~15年に制作した。2年で100点描くために、2~3日で1枚のペースで仕上げていった。
WWD:ガーデンをテーマにした理由は?
ナタリー:私の作品のベースになっているものが植物や花、動物だから、自然とガーデンになった。花や動物と細かいテーマにすると制限が出てくるでしょ。私は制限されるのが嫌で、自由に好きなものを描きたいからガーデンにした。ガーデンは花などを育てる場所だけど、“心の庭”という意味も込めた。私の好きなものだけを集めた温かいシークレット・ガーデン、それは私の夢のようなものでもある。
前世はバンビだったかもしれない
WWD:「バンビ」の本の挿絵を手掛けたきっかけは?
ナタリー:「バンビ」はフェリックス・ザルテン(Felix Salten)の小説で、小鹿のバンビが成長して自立する話。依頼を受けた時は進行中のプロジェクトが多すぎて、断わろうと思った。でも、出版社は私が断れないと知っていたのよ。私のドイツ人の祖母の苗字は“森の中の鹿”という意味で、実際、森で動物を飼育する仕事をしていた。私のパリのショールームの名前もバンビでしょ。だから、私が挿絵を描くしかないと引き受けた。もしかしたら前世はバンビだったのかもしれないって思う。
WWD:「バンビ」を通じて「ミナ ペルホネン」とコラボしたきっかけは?
ナタリー:テキスタイルから製作するデザイナーが少ない中、アキラ(皆川明)のオリジナルのテキスタイルは素敵だなと思っていた。いつか、コラボしたいと思っていて、それが実現した。
語りかけてくるものに魅力を感じる
WWD:作品を制作する上でのモットーは?
ナタリー:何も語りかけてこない作品は、何かが不足していると思う。単に美しいとか、華やかだというだけでなく、見る人に作品を通して語りかけるようなものを作っているつもりよ。
WWD:自身の作品を言葉で表現すると?
ナタリー:ポジティブ。そして、子どもらしさかしら?人生におけるポジティブな面を表現したいと常に思っているわ。
WWD:自身のファッション・スタイルは?
ナタリー:フィッシャーマンニットやマリンニットなどに作業着のパンツをミックスしたフレンチ・トラッド。これらの作業着には背景にストーリーがあるでしょ。これらは、着ると私に語りかけてくる気がする。