2018年3月に今年夏までの身売りのウワサが報じられた「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」は、投資会社や商社、中国のコングロマリットなど10社の有力買い手候補との会談を近日中に予定しているようだ。「アクネ ストゥディオズ」は1月に金融グループのゴールドマン・サックス(GOLDMAN SAKS)と契約し、7月末に売却先確定を目指していたが、情報筋によれば同ブランドの売却先探しは難航しているという。
「アクネ ストゥディオズ」が希望している売却額は同社の株式70〜80%に値する約3〜4億ユーロ(約387〜516億円)で、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)の14〜15倍だ。同社の年間売上高は約2億ユーロ(約258億円)だが、過去半年間のビジネスは停滞気味と複数の情報筋が明かしている。このため、これまで候補に挙がっていた数社は降り、現在残っている買い手候補は慎重になっているようだ。
ニューヨークのコンサルタント会社、スレッドストーン アドバイザーズ(THREADSTONE ADVISORS)のウィリアム・サスマン(William Susman)=マネジング・ディレクターは「『アクネ ストゥディオズ』はクリエイティブに強いグローバルブランドだ。だがもうピークに達してしまったのか、10億ユーロ(約1290億円)相当の見返りが期待できるのか、今後の成長見通しがカギとなっている」と分析している。また、同取引に詳しい投資家は「『アクネ ストゥディオズ』は米国市場で勢いを失っている一方、アジアでは非常に好調」と評価している。
「アクネ ストゥディオズ」は1992年にスウェーデンのストックホルムでジョニー・ヨハンソン(Jonny Johansson)とミカエル・シラー(Mikael Schiller)が設立。ヨハンソンは「われわれ2人は株式を全て売却するつもりはない」と、7月初めにパリで発表された「アクネ ストゥディオズ」2019年春夏コレクションで米「WWD」に明かし、「新しい株主を受け入れなければならない。われわれも変化のときだ」と話していた。
買い手有力候補と見られているのは、レナウンや仏アパレルメーカーのSMCPなどを傘下に持ち、2月にバリー(BALLY)を買収したばかりの山東如意科技集団(SHANDONG RUYI GROUP)や、ランバン(LANVIN)を買収した投資会社フォーサン インターナショナル(FOSUN INTERNATIONAL)など、手広く買収を進めている中国企業だ。
契約成立は金額に大きく依存するが、9月または10月に延期される可能性が高いと関係者は見ている。なお、ゴールドマン・サックスのコメントは得られていない。