7月にスウォッチ グループ(SWATCH GROUP)が世界最大の時計・宝飾の合同展示会バーゼルワールド(BASEL WORLD)からの撤退を表明したが、腕時計メーカーの見本市離れが加速しているようだ。スイスの高級時計ブランド「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」は、国際高級時計見本市、SIHH(SALON INTERNATIONAL DE LA HAUTE HORLOGERIE、通称ジュネーブ・サロン)への出展を取り止めると発表した。2019年1月のSIHH2019を最後にするという。国際見本市の意義が問われている。
「オーデマ ピゲ」はSIHHへの出展取り止めについて、「ビジネスモデルは変化している。世界中の顧客や腕時計愛好家との関係強化のため、新たな道を切り開くことに決めた」とコメントし、「リシャール・ミル」も、ここ数年で国外の販路ネットワークが発展して直営店が増えたこともふまえ、「展示会に出展してもブランドの存在感を出すことはできず、顧客層を特化した販売戦略に合わなくなった」と話した。
これまで腕時計業界では、競合他社がひしめく見本市に出展し、バイヤーやクライアントに豪華な展示でアピールするのが習わしだった。しかしインターネットの登場により、腕時計メーカーと顧客の接点が劇的に変化した。
自社ブランドの他にも「ジューシー クチュール(JUICY COUTURE)」「コーチ(COACH)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」の腕時計をライセンス展開するモバード グループ(MOVADO GROUP)は、今年3月に行われたバーゼルワールドへの出展を辞退した。その代わりに4日間にわたるサミットをスイス・ダボスで開催し、300人のゲストを招待した。その費用は見本市への出展費の20%で収まり、残りの資金はデジタルチャネルの強化に充てるという。
SIHHを取り仕切っているのは、「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)で、「ユリス ナルダン(ULYSSE NARDIN)」「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」を擁するケリング(KERING)も参加している。対するバーゼルワールドは スウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の撤退表明後は、「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」「ゼニス(ZENITH)」「ウブロ(HUBLOT)」「ブルガリ(BVLGARI)」を擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が頼みの綱だ。