パリの商事裁判所は12日、上海企業アイシクル・ファッション・グループ(ICICLE FASHION GROUP以下、アイシクル)による仏ブランド「カルヴェン(CARVEN)」の買収を認める判決を下した。
この判決を受けて、同社の子会社アイシクル・パリ・モードのイザベル・カプロン(Isabelle Capron)=ジェネラル・マネジャーは、本拠地である中国で「カルヴェン」の事業を展開していくことを明らかにした。またこれを足掛かりに中国国外へも進出するという。今回の買収取引額などの詳細は明らかにされていないが、数百万ユーロと言われている。
同ジェネラル・マネジャーは、「中国市場で大きなチャンスがある。若々しくフレッシュなブランドのコレクションをリローンチすれば、中国の若い女性たちを中心に人気を博すはずだ」と話し、「今回の買収は当社と『カルヴェン』両社にとって非常に重要だ。『カルヴェン』は厳しい状況にあったが、素晴らしい価値を持つブランドだ。できる限りのことをしていく」と語った。「カルヴェン」は財政難のため、日本の民事再生法に相当するフランスの法律適用を申請。セルジュ・ルフュー(Serge Ruffieux)=クリエイティブ・ディレクターによる2018年春夏コレクションの生産が滞り、デリバリーをキャンセルしていた。
また同社は「カルヴェン」の事業やコレクションをフランス、中国、その他市場で展開する。これはブランドの再出発を目的としたもので、「アイシクルの傘下に入ることにより、ブランドの成長促進だけでなく、事業連携による相乗効果も期待される」としている。また、同社は「カルヴェン」のブランド戦略やデザインの独立性を尊重するという。「カルヴェン」のデザインチームについては、「まだチームメンバーと会っていないのだが、まずはチームの考えを聞き、相互理解のため時間を取りたい」と話した。
1997年に葉寿増が創業したアイシクルは、ハイクオリティーで環境に配慮したメンズ&ウィメンズの自社ブランド「アイシクル」を手掛ける。価格は1500ドル(約16万8000円)かそれ以上のアウターもある。フランチャイズ店も含め中国本土に250以上の店舗を有し、2017年の売上高は2億400万ユーロ(約263億円)で前年比23%増だったという。13年にヨーロッパ圏初の事業拠点をパリに設立し、デザインやマーケティングを開始。パリに路面店をオープンしてから8カ月になる。また19年にはファッションだけでなくアートやフードも扱うライフスタイルショップの国外初の旗艦店をパリにオープンする予定だ。
同ジェネラル・マネジャーによると「13年からの5年間、中国でのブランド価値を高めながら、国外市場でのチャンスをつかむため着々と準備を進めてきた」という。今後もブランドの買収計画はあるとしながら「『カルヴェン』買収というチャンスは、想定よりも早くやってきた」と話した。