“釣り用ベスト(フィッシングベスト)”がおしゃれ上級者の間で愛用者を増やしています。アウトドア気分を手軽にまとえるのが人気の理由です。ポケットの多さも、ハンズフリーを好むアクティブ派に支持されています。ヒットのきっかけの一つは、夏の音楽フェスティバル。両手をフリーにしやすく、移動やダンスも楽なので、フェスから街へと出番が広がったようです。ウエストポーチやサコッシュのブームに続くアイテムとして、脚光を浴びています。
最初はメンズの裏技的な着こなしでしたが、徐々にウィメンズにも波及しました。若い女性が古着の釣りベストを取り入れて、ミックスコーディネートを楽しんでいるようです。袖がない分サイズを合わせやすいので、古着でも探しやすい。性別にとらわれない「ジェンダーレス」の雰囲気も出せます。もともとは釣り用ですが、登山やハイキングの雰囲気も併せ持つため、マウンテンパーカを取り入れるような感覚でコーディネートを楽しむ人も多いようです。
ポケットいっぱいで着こなし無限大へ
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アウトドアブランド「コロンビア(COLUMBIA)」の2019年春夏シーズンは、釣りベストを豊富にそろえています。アウトドアブランドとしてもちろんこれまでも企画していましたが、19年春夏物のウィメンズでは着丈が短めなキュートなシルエットなど、バリエーションが広がっています。ユニセックスでは背中にビッグポケットを配した新タイプもお目見え。これは音楽フェスで多くの人が持ち運ぶ折り畳み式チェアが収納できるんだそう。畳んだチェアがスッポリそのまま収まるから、両手を解放できます。背中のアクセントになる点でもアイキャッチーです。
もともと女性の服はポケットがないタイプが多く、財布やスマートフォン、化粧ポーチなどの持ち歩きには、バッグが必要でした。でも、ポケットがいっぱい付いたベストは、荷物がたくさん入るので、“着るバッグ”といった感じで便利に使えます。とりわけ、小旅行や野外イベントなどではとても頼もしく感じるはず。
ちなみに「コロンビア」は、1年前の18年春夏にもセレクトショップ「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」とのコラボレーションでおしゃれ釣りベストを企画していました!
若い子だけじゃない、大人もコーディネート
釣り用ベストをおしゃれアイテムとして再評価する流れは、モードの世界にまで飛び火しており、大人女性も取り入れやすい提案が相次いでいます。上手に着こなすスタイリングのポイントを有力ブランドのランウエイからつかんでいきましょう。
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釣りベストを取り入れた大人コーデの代表格は「サカイ(SACAI)」です。1枚目の写真は、ポケットがいっぱいついたホワイトベストでボリューム感を出して、小顔と着やせのダブル効果を引き出しました。肩口にあしらったレースがフェミニンなムードを演出します。
釣りベストはミリタリーにも通じるタフ感を宿しているだけに、着こなす際には女っぽさやロマンティック感を盛り込んで、2枚目の写真のようにテイストミックスに仕上げるのが上手なスタイリング方程式です。透ける生地やプリーツ加工、スリットディテールなどのボトムスともなじみます。
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ニューヨーク発の「アナ スイ(ANNA SUI)」でも、釣りベストが多用されていました。サイクリングパンツやバミューダショーツは19年春夏のトレンドアイテム。1枚目の写真のように、ショーツに釣りベストを組み合わせれば視線が引き上がるので、生足から目をそらせさせる視覚効果もあります。じゃらじゃらと重ねたネックレスとシャツワンピース風アイテムで、縦落ちレイヤードにアレンジしています。
2枚目の写真のように、ロマンティックな印象の総レース・ワンピースにも、フィッシングベストを合わせていました。ワンピースの甘さが程よく抑えられて、大人女性にも取り入れやすいスタイリングに整います。
進化系アイテムはエッセンスいいとこ取り
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ワイルドな表情を帯びた釣りベストはさらに進化して、様々なフォルムやディテールが提案されています。もはやフィッシングの枠を越えて、ドレッシーでレディーライクなアイテムへと変貌を遂げつつあります。
たとえば、釣り具の専門メーカーが立ち上げたファッションブランド「ディーベック(D-VEC)」は、おしゃれ着としてまといやすい、フェミニンなジレタイプを19年春夏で企画しました。ポケットや金具、メッシュ素材などに、フィッシングベストの面影は残しながらも、着丈は長めで、裾にペプラムが施されています。
一方、パリコレの若手注目株「マリーン セル(MARINE SERRE)」のランウエイでは、ミリタリーウエアをアップサイクルした、ポケットだらけのドレスが披露されました。ポケットのサイズや向きがまちまちで、着姿にファニーな起伏をもたらしています。これもどことなく釣りベストを思わせる進化アイテムです。
機能とモードの間柄がますます親密になってきました。快適さや着回しやすさを求める感覚にも、進化形の釣りベストは溶け合います。アクティブでジェンダーレスなテイストはこの先もトレンドの軸になる見込みなので、この流れをウォッチしておくといいですよ。
ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い。