ストライプインターナショナルグループは、AI(人工知能)分析による在庫圧縮を軸にした2020年1月期の事業戦略を発表した。石川康晴・社長は19年1月期やそれまでを振り返り、「改革期と位置付けていた16~17年に、主力ブランドの回復や海外事業、EC関連サービス、ファッション以外の新事業に投資を重ねてきたが、18年にようやくその成果が出た」と自信を見せる。20年1月期は、国内SPA事業で大幅な在庫圧縮を進めることで、高い割引率で頻繁に行ってきたセール販売を抑制。あわせて、EC関連サービスや海外事業にもドライブをかける。自社の会員データを生かし、音楽関連分野にも19年秋をめどに進出すると発表した。
19年1月期の連結売上高は、前期比3.7%増の1380億円で着地する見込み。単体の売上高見込みは現時点では発表していない。20年1月期の連結売上高は同2%増の1400億円を目指す。M&Aなども含め、以前は100億円規模で売上高を伸ばしていたことに比べるとやや弱気に感じる数字だが、石川社長が強調するのは「ストライプインターナショナルで仕入高(生産金額)を小売価格ベースで350億円削減して前期の8割である1430億円にまで圧縮した上で、連結売上高を20億円上乗せする」という点だ。具体的な金額は明かさないが、連結営業利益は2倍になるという。
それを実現するためのカギが、AIを用いた分析による在庫最適化だ。基幹ブランド「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC&ECOLOGY以下、アース)」では、実験的に18年8月からAIでのデータ分析による在庫圧縮を開始。その結果「アース」の19年1月は、セール期ではあるものの「値引き率が14ポイント改善して54%になった。タイムセール時間も4割減った」。同ブランドの19年1月期の粗利益は前期の2倍以上という。18年1月期の単体決算は15億円の営業赤字だったが、19年1月期は黒字化を見込む。
実験で在庫発注量、値引き率の最適化には一定の手応えを得たため、2月から国内全ブランドにAI分析を広げる。仕入高350億円削減という数字は、AIがはじき出したものだ。店舗毎の商品配分についても、従来は都心型と郊外型の2MDしかなく、非効率を生んでいたが、「アース」のAI分析実験ではこれを8つに細分化。全ブランドで検証を進め、将来的には各店ごとに配分を変えいくと意気込む。
発注量を減らすことで、既存店売上高は前年同期比8%減前後を見込む。特に、「1月、7月のセール月での大幅な値引き販売を削減したい」。
在庫圧縮によって物流コストが下がり、検品などの店頭作業量も減ると共に、輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減など、環境問題にも対応できる点を強調する。19年2月から、社内にSDGs(持続可能な開発目標)担当部署を設けて意識を高めると同時に、その本丸として在庫圧縮に取り組む考えだ。
その他、国内事業では15年に立ち上げたファッションレンタルサービス「メチャカリ(MECHAKARI)」が、「広告費を除くと黒字転換した」ことを受け、19年は広告宣伝費を3億円増額。会員拡大を強化する。海外事業では、現地ブランドを買収して好調なベトナムで23店を新規出店する。中国本土では“ニューリテール”で戦略パートナーシップを結ぶアリババの「Tモール(T MALL)」だけでなく、テンセント傘下の「ウィーチャットモール(WeChat MALL)」にも出店する。また、フィリピン市場にも参入を検討する。
同社らしいフットワークの軽い新戦略が、音楽プラットフォームサービスへの参入だ。19年秋をめどにIT関連企業とのジョイントベンチャーで新会社を立ち上げ、音楽のサブスクリプションなど、さまざまなサービスを提供していく。「自社ブランドの編集型EC『ストライプクラブ(STRIPE CLUB)』には、F1層の会員が既に約700万人いる。会員データを活用し、彼女たちの毎日の生活の中に、音楽や飲食などを含め、われわれのサービスやプロダクトをどんどん入れていくことが理想」だ。