3月28日にパリのシャンゼリゼ通りにオープンするギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE、以下ラファイエット)の新店について、その全貌が明らかになった。
1930年代に建てられたアメリカ系銀行の建物を3年かけて改修し、総面積は6500平方メートルを超える。内装はビャルケ・インゲルス・グループ(BJARKE INGELS GROUP)が手掛けており、大理石の柱の間には天井に付けられた大きなガラス箱が浮いているなど、クラシックとモダンなテイストが融合したユニークでドラマティックな空間に仕上げられている。ニコラス・ハウズ(Nicolas Houze)=ギャラリー・ラファイエット最高経営責任者(CEO)は、「店全体がインスタ映えする」と自信を見せた。
建物は4層で、地下はフードコートだ。サンドイッチやヌードルを提供する「リトル・ジアオ(LITTLE ZHAO)」や地中海料理の「リビエラ(RIVIERA)」、オーガニックカフェの「MAISIE CAFE」、そして「ル・ショコラ・アラン・デュカス(LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE)」などが入っている。また、1階には「キャビアカスピア(CAVIAR KASPIA)」と「ジャックムス(JACQUEMUS)」のコラボレーションで、サイモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)がデザインを担当したカフェの「シトロン(CITRON)」があり、3階には高級レストランの「ウルサン(OURSIN)」が7月にオープンする。
1階はビューティを取り扱うほか、ポップアップストア用のスペースになっている。オープン記念として、「シャネル(CHANEL)」がファッションショーの舞台をイメージしたポップアップを4月21日まで実施する。なお、同ブランドは3階にもシューズとウオッチの店をそれぞれ別に出している。
2階は新進デザイナーのブランドなどを扱う実験的な空間となっており、レザーグッズやジュエリー、スニーカーなどを販売するほか、ブランドとのコラボ商品の発売イベントなども行えるようになっている。また“バイナウ、ウエアナウ(BUY NOW, WEAR NOW)”コーナーでは、その日の天候や最近のイベントにインスピレーションを受けたアイテムを陳列する。
3階にはウィメンズとメンズのラグジュアリーブランドが入り、アパレルやレザーグッズ、フットウエア、ウオッチ、ファインジュエリーを取り扱う。その一部として、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)がキュレーションを行うジュエリーコーナーも設けられている。また、かつて銀行だった頃には役員室として使われていた約100平方メートルの部屋は、得意客向けのVIPサービスを提供したり、サイン会などのイベントを実施したりするスペースに改装された。毎週金曜日の午後には、ハリウッドでも活躍する有名ヘアーアーティストのジョン・ノレ(John Nollet)によるサービスも提供するという。
全体でおよそ650のブランドを取り扱うが、カテゴリー別に商品を陳列する従来の百貨店とは異なり、さまざまなアイテムが入り混じった売り場作りがされている。また、従業員450人のうち300人が インスタグラム経由で採用されたパーソナルスタイリストで、顧客にスタイルやトレンドをアドバイスするという。パーソナルスタイリストは在庫などを即座に確認できるアプリなどを活用して接客をするが、そうしたアシスタントなしで買い物をしたい顧客は、デジタル化されたハンガーによって在庫やサイズの確認ができる。ナディア・ドゥイブ(Nadia Dhouib)=ストアマネジャーは、「消費者がオンラインで買い物をする場合と同様の、柔軟でシームレスな買い物体験を提供しようと思い、商品を色やスタイル、トレンド別に陳列した。新たな発見をしつつ、買い物を楽しんで欲しい」と語った。
こうしたミレニアル世代を引き付けるための施策を行う一方で、主要なラグジュアリーブランドに長年の業界ルールを破って出店してもらうために苦労した面もあるという。例えば、シャンゼリゼ通り店にはケリング(KERING)が擁する「グッチ(GUCCI)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」が入っているが、そのライバルであるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が擁する「フェンディ(FENDI)」や「ロエベ(LOEWE)」も出店している。また、「ルイ・ヴィトン」はシャンゼリゼ通りに旗艦店を構えている。ハウズCEOは、「当然だが、ブランドと戦うことが目的ではない。彼らの協力を得ながら、従来とは異なる百貨店を作りたかった。最初は多少の抵抗もあったが、シャンゼリゼ通り店のコンセプトをじっくりと話し合うことで、既存のオスマン通り店などと競合することはないと理解を得られた」と述べた。
パリで仏政府への抗議行動が続く中でのオープンとなるが、シャンゼリゼ通りは16日にも激しい暴動が起きたばかりだ。そうした影響もあり、予定よりも1週間遅らせての開店となった。ハウズCEOは、「抗議行動は土曜日に行われるので、日曜日の売り上げでその分をカバーしていたが、最近はそれが難しくなってきている。顧客の65%は海外からの観光客であり、暴動のイメージが定着すると彼らの足がパリから遠のいてしまう。売り上げにも影響しており、早急に収束してほしい」と懸念を示しつつも、長期的にはシャンゼリゼ通り店が成功することを見込んでいるとコメントした。なお、同店は現地在住の顧客と観光客の割合がおよそ半分ずつと、オスマン通り店よりも現地在住の顧客が多くなることが想定されている。
なお、ギャラリー・ラファイエットは23日に上海にも店舗をソフトオープンした。5層2万5000平方メートルの新店は商業施設L+MALL内に位置し、13年にI.Tグループとのジョイントベンチャーでオープンした北京店に次ぐ中国2店目だ。同社は2025年までに10店体制10億ユーロ(約1240億円)ビジネスを狙っている。