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世界屈指のウイスキー・クリエイターに聞く、“完璧すぎる”「グレンモーレンジィ」の“完璧すぎない”飲み方

 MHD モエ ヘネシー ディアジオ(MHD MOET HENNESSY DIAGEO、以下MHD)のシングルモルトウイスキーで“完璧すぎるウイスキー”と評される「グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)」は3月6日、新作“グレンモーレンジィ アルタ(GLENMORANGIE ALLTA、以下、アルタ)”を発売した。これは2010年から毎年テーマを変えて本数限定で製造している‟プライベートエディション”と呼ばれるラインの第10弾だ。

 日本ではソーダで割って飲むハイボールがここ数年のトレンドだが、ウイスキーは奥が深く、初心者はうかつなことを言えない雰囲気さえあり、「気になるけど最適な飲み方が分からない」と思っている人も多いはず。そこで、来日した「グレンモーレンジィ」「アードベッグ(ARDBEG)」最高蒸留・製造責任者のビル・ラムズデン(Bill Lumsden)博士に、ウイスキーの習熟度別オススメの飲み方など気になることを聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):“最高蒸留・製造責任者”とはどういう仕事?

ビル・ラムズデン最高蒸留・製造責任者(以下、ラムズデン):海外視察のために飛び回っていることも多いのですが、普段はヘッドオフィスのラボにいます。だいたい朝のうちにテイスティングをすませて、その後にチームと新製品の打ち合わせをします。「グレンモーレンジィ」も「アードベッグ」も毎年1本は新作を出しますから。開発には何年もかかることもあるので、もっと先のものも今から検討しています。ルーティーンがないことが私の仕事の楽しいところです。

WWD:朝のうちにテイスティングをするのはなぜ?

ラムズデン:朝の方が味覚がフレッシュだからです。

WWD:ラムズデン博士が一番好きなお酒はウイスキー?プライベートでもウイスキーを飲む?

ラムズデン:ウイスキーとワイン、それから紅茶も好きですね。ウイスキーはプライベートでもよく飲みます。ビールももちろん飲むけど、昔よりは飲まなくなりました。年齢とお腹回りが気になるからね(笑)。

WWD:「グレンモーレンジィ」「アードベッグ」それぞれの特徴は?

ラムズデン:「グレンモーレンジィ」は風味や味わいがソフトで複雑でエレガント。「アードベッグ」はスモーキーなところが特徴です。

WWD:日本ではウイスキーをソーダ割りのハイボールにして飲むのがメジャーな飲み方の1つだが、その飲み方についてどう思う?邪道だと思う?

ラムズデン:私自身、ハイボールの大ファンですし、‟アードベッグ 10年”はハイボールにして飲むのが最も好きです。ソーダ割りは、のど越しのよさや清涼感が特徴ですが、キーフレーバーのほとんどをきちんと感じられるのもいいところです。

WWD:ウイスキー初心者とウイスキー愛好家に勧める飲み方は?

ラムズデン:例えばモルトウイスキーにクラッシュトアイスを入れたりコーラで割ったりすると、せっかくの風味が飛んでしまうので避けたいところですが、大前提として“正しい”とか“間違った”飲み方というのはないので、堅苦しく考えず、好きに楽しんだらいいと思います。初心者であれば、ニート(ストレート)やハイボール、カクテル、加水するなどあらゆる方法を試してみて、自分のお気に入りを見つけたらいいのではないでしょうか。先日、台湾を訪れたときに、辛い料理がたくさん出てくる台湾料理店に行きました。お店のオーナーはウイスキー愛好家で、冷凍庫で凍らせた「アードベッグ」を出してきたんです。私は絶対に好きになれないと思ったのですが、飲んでみたら風味も残っていたし、冷たさが激辛料理とマッチしてすごくおいしかったんです。そういう新しい発見もあるのでいろいろと試してほしいと思います。

また、愛好家ならすでに自分のお気に入りの飲み方があるでしょうから、1つだけアドバイスすると、年代物のウイスキーに氷は入れない方がいいですね。そしてレアなウイスキーならニートで飲んだ後に、加水して楽しんでほしい。

WWD:今年のプライベートエディション“アルタ”について。“酵母”に注目しているようだがこのコンセプトが誕生したきっかけは?

ラムズデン:著名なウイスキー・ビール評論家のマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)が書いたウイスキーガイドを1997年にもらったのですが、その中の「グレンモーレンジィ」の項を読むと、「ユニークな酵母を使っている」とありました。そこで何十年も前の資料までさかのぼって確認してみましたが、それを裏付ける記述は出てきませんでした。だからマイケルの推測なのか、事実誤認なのか、はたまた私が知らないことを知っていたのかはわかりませんが、とにかくそこからインスピレーションを膨らませました。また、ウイスキー業界にとって酵母というのは単純に糖をアルコールに変換するための手段としか見られていないので、酵母を専門的に研究してきた身として、酵母に焦点を当てたものを造りたかったという思いもありますし、10年前に亡くなったマイケルへのオマージュの意味も込めています。

WWD:香ばしいパンのような風味や味わいは酵母から来るものか。

ラムズデン:そうですね。通常の「グレンモーレンジィ」は、樽の風味を付けるためにアメリカンオーク樽を2回までしか使わないのですが、“アルタ”には香りがきつすぎると思い、通常は捨ててしまう3回目の樽を使いました。そうすることで酵母の風味や味わいを残すことができました。

WWD:今後出る‟プライベートエディション”のヒントを教えてほしい。

ラムズデン: “アルタ”は酵母に着目しましたが、11弾は再び樽に着目しています――ということだけお伝えできますが、あとは企業秘密です(笑)。

WWD:職業柄、注意していることや習慣にしていることは?

ラムズデン:普段はタバコを吸わないし辛い物も食べ過ぎないようにしています。それ以上に大事なことは、ラボに行く前にひげをそったり香水をつけたりしないことですね。香水をつけた人が入ることも禁止しています。

WWD:新作を造る上でインスピレーションはどこから得ている?

ラムズデン:寝ている間に夢をはっきり見ることが多いので、それをノートに書きつけています。あとは、いろんな国を訪れたり新しい料理を食べたり、そういうところからインスピレーションを得ることもあります。思い浮かんだことを絵として残しておくこともありますね。1日に20個くらいアイディアが出てくることもあります。

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