4月にイタリア・ミラノで開催されるインテリアとデザインの祭典「ミラノサローネ(MILANO SALONE)」で注目を集めているのが、ミラノの有力ギャラリー「ニルファー・ギャラリー(NILUFAR GALLERY以下、ギャラリー)」の展示だ。“発見” “交差” “創造”をコンセプトに、1979年にニナ・ヤシャー(Nina Yashar)が設立。インテリアとアートをミックスした絶妙な展示が話題を呼び、インテリア業界関係者も一目置くギャラリーになった。
2015年にはミラノ郊外の倉庫を改造した「ニルファー・デポ(NILUFAR DEPOT以下、デポ)」をオープン。広々としたスペースには、イタリア・デザイン界の巨匠であるジオ・ポンティ(Gio Ponti)やカルロ・スカルパ(Carlo Scarpa)らによるビンテージ家具や照明などをコンテンポラリーアーティストの作品と共に展示する。「ミラノサローネ」期間中は「ギャラリー」、「デポ」ともに、業界関係者だけでなく多くの来場者が訪れる名所になっている。
オーナーであるニナ・ヤシャーに、「ギャラリー」と「デポ」、協業するアーティストなどについて聞いた。
WWD:「デポ」と「ギャラリー」があるが、それぞれの役割は?
ニナ・ヤシャー(以下、ヤシャー):「ギャラリー」は私にとっては家のようなもので、これからもずっとそう。一方「デポ」は、私が想像するあらゆるものに変化する場所で、それが私のクリエイティビティーが広がる場となっている。
WWD:「ミラノサローネ」期間中に「ギャラリー」で展示するアーティストをどのように選ぶか?自身からアプローチするのか、それともアーティストからか?
ヤシャー:ほとんどのアーティストがコンセプトを持って私にアプローチしてくるけど、私の方から作品制作を依頼したり、お気に入りのアーティストに新作を頼んだりすることもある。
WWD:昨年「ギャラリー」で行ったプライベートクラブの「シェ・ニナ(CHEZ NINA)=ニナの家にて」を再度開設する理由は?今回のコンセプトは?来年も継続するのか?
ヤシャー:「シェ・ニナ」は‟ビストロかクラブを持つ“という私の子どもの頃からの夢に基づいた継続的なプロジェクトよ。この夢は、全然褪せることなく、デザイナーのインディア・マダヴィ(India Mahdavi)のおかげで実現した。前回と同じにはしたくなかったから、2回目はヴィべケ・フォンネスバーグ・シュミッド(Vibeke Fonnesberg Schmidt)を招いて「シェ・ニナ」を別の観点から見て照明を制作してもらった。女性は2回のパーティーに同じドレスを着たりしないでしょ?それと同じ感じね。
WWD:注目しているアーティストやデザイナーは?
ヤシャー:オードリー・ラージ(Audrey Large)よ。
WWD:今年「デポ」では複数の展示を行ったが?
ヤシャー:メインの展示は「ファー(FAR)」で、昨年のインスタレーションも手掛けたミラノのスタジオ・ヴェデ(STUDIO VEDET)とともに構成した。展示デザインは、ジェノバのデザインスタジオであるスペース・キャビア(SPACE CAVIAR)。素材に対する実験と革新的な制作技術にこだわるベルギー・オランダ語圏の若手デザイナーによる作品がほとんどで、“デザインから機能的なアート“への移行を表現している。スタジオ・ヴェでは長く協業しているマルティノ・ガンパー(Martino Gamper)の紹介で、彼らからデザイナーの提案があった。もう一つは、「ニュー・スカルプチュアル・プレゼンス(NEW SCULPTURAL PRESENCE)」で、ロンドンのアートコンサルタントであるリビー・セラーズ(Libby Sellers)と共同で構成し、展示デザインはパトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola)が手掛けた。3人のコンテンポラリーアーティストの陶磁器作品を展示している。リビーとは彼女がロンドンにギャラリーをオープンした時からの知り合いで、世界中のアートフェアなどでよく合う顔見知りだった。彼女の提案で今回の展示が実現した。
WWD:今回のプロジェクトで一番苦労した点は?
ヤシャー:構成する過程で各アーティストやデザイナーに最もふさわしい作品を絞り込み選ぶこと。これは苦労する点でもあり、楽しい点でもある。