英・ロンドン発の「ユア ライブ(YR LIVE)」は、ユーザーが自由にカスタマイズしたデザインをプリントや刺しゅうで即時的に製品化する、体験型ライブデザインサービスだ。本国ではアパレルやメーカー、IT、化粧品など、さまざまな業界の企業とタッグを組み、導入実績は4000件を超える。2017年9月には日本に上陸。音楽関連のグッズなどへの導入も進めている。プリントや刺しゅうのサービスが数多くある中でなぜ「ユア ライブ」は拡大できているのか?同サービスを日本で運営するユア ジャパンの由羽弘明代表と小林翔太取締役に話を聞いた。
WWD:「ユア ライブ」はどのようなサービス?
由羽弘明ユア ジャパン代表(以下、由羽):タッチディスプレーでユーザーが自由にカスタマイズしたデザインを、プリンターや刺しゅう機を用いて3分ほどでアウトプットできるサービスです。現在はポップアップストアなどのイベント、常設店、オンラインストアの3軸でサービスを拡大しています。
WWD:プリントや刺しゅうのカスタムサービスが数多くある中で、「ユア ライブ」の独自性や優位性はどこにある?
由羽:われわれがサービスに初めて出合ったのはラスベガスの展示会だったのですが、まず驚いたのはそのシームレスさでした。タッチディスプレー上でいろいろとデザインを選んでみたら、すぐに商品ができた。プリントも既製品と変わらないクオリティー。UI/UXも優れていて、ストレスフリーでデザインを楽しめる。
小林翔太ユア ジャパン取締役(以下、小林):スマートフォンと同じような操作感で、ブランドと一緒にモノ作りをしている感覚になることができます。ユーザーにとっては非常にエキサイティングで楽しく、アウトプットした商品に愛着が湧く。現代の消費者は商品を一方的に売ればいい存在ではなく、プロデューサーでありコンシューマーでもある“プロシューマー”として、ブランドと一緒にモノづくりをする存在になっている。そういった時代にブランドとユーザーの距離を近づけるデザイン体験が「ユア ライブ」の特徴だと思っています。
WWD:「ユア ライブ」を日本で導入した経緯は?
由羽:われわれはもともと、コネクト インターナショナルという企業で海外アーティストのグッズなどのライセンスビジネスを手掛けてきました。ライセンス業界で、Tシャツにアーティストのロゴが入ると欲しくなるなど、アーティストのブランド力が購買意欲を引き出すと感じていたので、さらにカスタマイズの要素が加わればファンも喜ぶだろうとは直感的に思っていました。その中で「ユア ライブ」のようなデザイン体験の価値をシームレスに提供できるものは日本でも受け入れられるはずだと考え、本国の企業とコネクト インターナショナルのジョイントベンチャーでユア ジャパンを立ち上げました。
日本と海外のユーザーの違いとは?
WWD:サービスに対するユーザーの反応は日本と海外では違った?
由羽:アーティストにおいても、ファッションにおいても、ブランドに対するロイヤルティーは日本の方が高いと感じましたね。「ユア ライブ」はブランドとファンのエンゲージメントを高めるサービスなので、日本のマーケットでもハマると思っています。
小林:エンゲージメントという点で見ると、ある程度“ブランドらしさ”をベースにした上でのカスタマイズでないとうまくいかないのもポイントです。導入ブランドさんからは「もっといろいろなカスタマイズができた方がユーザーも楽しめるのでは?」という意見も出るのですが、ユーザー自身が一番気持ちのいいところにデザインの幅を設定した方がいい。その幅をわれわれとブランドさんで話しあって決めています。
WWD:日本では音楽関連のグッズなどへの導入も積極的に進めている印象だが?
由羽:本国ではファッションなどの要素が強いですが、日本ではわれわれがアーティストのライセンスなどで音楽関連に強かったこともあり、注力しています。直近では乃木坂46のオフィシャルグッズにも導入が決まりました。最近はエンタメの世界がファッションに寄っていることもあり、シナジーが生まれているとも感じています。サービスを導入していただいているLDHアパレルの「24カラッツ」などが代表的ですね。
WWD:導入企業からはどのようなリアクションがある?
由羽:セールスが伸びたり、記念日などのお土産需要にも応えられるようになったりといった話はよく聞いていますね。少し前まではポップアップストアなどのイベントを盛り上げる目的でのサービス利用が多かったのですが、「ラルフ ローレン(RALPH LAURENT)」旗艦店への導入など、徐々に常設店にもサービスが広がっています。
小林:ブランド側はプリントや刺しゅうを行うボディーだけを用意しておけばいいので、在庫リスクの減少にもつながります。さらには、「ユア ライブ」のシステムにはテンプレートが存在しない。ブランドさんごとにイチからプログラムを開発しています。全く同じサービスにはならないため、良い意味で「『ユア ライブ』っぽいな」と思わせない点も評価されているのかなと感じています。
WWD:今後はどのように展開する予定か?
由羽:今後はサービスの幅をより広げていきたいです。そういった中で、システムのテンプレートも作り、予算が少ないクライアントの方にもサービスを提供していく予定です。イチからシステムを構築するのはそれなりの金額がかかるので(笑)。また、グローバルも含め、オンラインも強化しています。例えば「DKNY」やH&Mグループ、「ラルフ ローレン」などの本国のオンラインショップで行っているカスタマイズサービスもグループで設計しています。ゆくゆくはプリントや刺しゅう以外にも、デザインの幅も工場と連携し広げることでマスカスタマイゼーションをリードする企業になれればと思っています。