フランス商事裁判所は7月25日、経営不振のため4月30日から管財人の管理下に置かれていたソニア リキエル(SONIA RYKIEL)の清算を決定した。同社の親会社が買い手や提携先を探していたが、同裁判所が定めた期限までに見つからなかった。
「ソニア リキエル」はパリのサンジェルマン通りにある歴史的建造物の旗艦店を含め、フランス国内を中心に10の直営店を構えているが、清算に伴って即日閉店された。ニューヨーク、ロンドン、ブリュッセル、ルクセンブルクの店舗は既に閉店されている。卸先は世界に200カ所程度あり、中国語圏で10店舗を抱える中国の有力百貨店レーン クロフォード(LANE CRAWFORD)や大手ファッションECサイトの「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」と提携している。
1968年に創業したソニア リキエルは、ボーダー柄やスパンコールをあしらったカラフルなニットが人気だった。長らく家族で経営していたが、2012年に香港の投資会社ファースト ヘリテージ ブランズ(FIRST HERITAGE BRANDS、旧ファン・ブランズ)に株式の80%を売却。その後、16年に創業デザイナーのソニア・リキエル氏が死去したことも業績不振に拍車をかけた。ファースト ヘリテージ ブランズは7年間でおよそ2億ドル(約242億円)を投資したが、情報筋によるとソニア リキエルの売上高は11年では8370万ユーロ(約101億円)だったが、18年には3500万ユーロ(約42億円)まで下がり、赤字も140万ユーロ(約1億6940万円)から2000万ユーロ(約24億円)にまで膨らんだ。その上、18年は50周年を祝うイベントに1000万ユーロ(約12億円)を支出したという。
ファースト ヘリテージ ブランズは、「ニットの女王」と呼ばれたソニアの名声や高いブランド認知度をもとに買い手を探したものの、うまくいかなかった。買い手候補としては、エマニュエル・ディモズ(Emmanuel Diemoz)元バルマン(BALMAN)最高経営責任者が率いるグループと、フランスの富豪一族が有力視されていたが、前者は店舗の賃料引き下げなどを条件としていたこと、後者は財務計画に実現性がないことなどの理由で成立には至らなかった。
ラグジュアリー業界を専門とするM&Aコンサルタント会社オルテリ・アンド・コー(ORTELLI AND CO.)のマリオ・オルテリ(Mario Ortelli)=マネジング・パートナーは、「現在最も活発な消費者層の一つであるアジアのミレニアル世代に好まれないと、事業を継続するのはなかなか難しいだろう」と語る。ソニア リキエルを擁するファースト ヘリテージ ブランズの親会社は香港の大手商社リー&フォン(LI & FUNG)だが、それでも中国市場で成功するのは難しいようだ。
「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」を擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)、そして「グッチ(GUCCI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」を擁するケリング(KERING)などのラグジュアリー大手は、その資金力を武器に世界各国の一等地に店舗を構え、華やかな広告を打ってブランド力を高めることで消費者の関心を引き付けている。LVMHやケリングの業績は19年も好調だが、ソニア リキエルの清算は、より小規模なファッションブランドが置かれている苦境を浮き彫りにしたといえるだろう。
なお、オンワード樫山がライセンスで手掛けるブランド「ソニア・リキエル コレクション(SONIA RYKIEL COLLECTION)」は、18-19年秋冬で終了している。また17年にソニア リキエル ジャポンが設立されているが、19年7月末でクローズする。