「WWDビューティ」10月24&31日号は、2020年春夏パリ・ミラノ・ロンドンヘア&メイク特集です。特徴だったのは、数シーズン続くナチュラルメイクがさらに個性を際立たせるナチュラルに進化しており、ミニマルなメイクアップが多く見られた点です。今回、この特集を担当した記者と、ニューヨークのコレクション取材を担当した記者に、NYと東京を含めたコレクションのヘアメイクを語ってもらいました。記者独自の目線で“かわいい”と思ったブランドをお届けします。(ちなみに、2020年春夏NYコレクションビューティトレンド号は、10月10日号に掲載しています)。
鼎談参加者
北坂映梨:「WWDビューティ」記者。NYコレクション取材は5回目
浅野ひかる:「WWDビューティ」記者。今回の特集を担当
福崎明子:「WWD JAPAN.com」デジタルデスク。司会進行
福崎明子(以下、福崎):まずは北坂さん、NYコレクションも含めどのブランドのヘアメイクが一番印象的だった?
北坂映梨(以下、北坂):好きだったのは、数々ありますが、やっぱり10月10号の表紙にした「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」だと思います。これまでNYに5回行っていて、何回“ダイバーシティー”って書いたんだろうと思うぐらい書いてきて……。今回、その勢いが落ちることなく増している感じでした。それが表現されていたのが、61人全員が違うヘアメイクをしていた「マーク ジェイコブス」です。広い会場の奥から61人がわーって歩いてきた時は、えっ、何が起きたの?って思ったんですけど、本当に本当に感動でした。
福崎:画像だけでもすごい迫力だったけど、実際見てどうだった?
北坂:「WWDジャパン」のコレクション号を振り返っても、ファッションの世界では多様性、ダイバーシティーの表現は多くで見られていたんだけど、ビューティではどう表現するのか?疑問だったんです。これまで個性を出すために、一つのブランドの中で、この3人のモデルはこのヘアメイク、4人はこのヘアメイクでというのはありましたが、でも実際たとえ同じ人種のモデルだったとしても、髪質も長さも肌色も体型も一人一人違うわけで。同じメイクでは似合わないと思うんですが、全員違うのは手間も掛かるだろうし、見たことなかったんです。だから「マーク ジェイコブス」の全員違うヘアメイクは圧巻でした。
浅野ひかる(以下、浅野):これって何人ぐらいのヘアメイクさんが入っているんですか?
北坂:たぶん、ヘア、メイクそれぞれ60人ぐらいいたと思います。夜の6時、7時からのショーでモデルの方の入り時間は早朝4時ぐらいだったと聞きました。
浅野:早い!
福崎:それはすごいね!その中でも、このメイクが好きとか、個性があったな、とかある?
北坂:個人的にはカラフルなメイクが好きだから、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)とか、ほか髪の毛が半分茶髪、半分金髪の子や、この坊主の子もかわいい。
浅野:確かに印象的。坊主の子はヨーロッパのコレクションのショーでも出てましたよね。
福崎:こういう青い目元のラインは、日本人でも真似できそうかな?全部はできなくても目尻に少しだけ入れるとか。
浅野:今、ここまではっきりとした色を使うって、日本でも違和感ないのかもしれないと思っています。以前、あるブランドの人が、「若い人はみんなすごい冒険していて、色を使うのに抵抗がないと思います。コンサバって言葉は死語かも」っておっしゃっていて。あえてこれぐらい大胆なメイクは日本でもいけるかもですね。
北坂:最近、日本でもカラフルなメイクが多くなってきたと思います。リニューアルした「ルナソル(LUNASOL)」やKANAKO新ディレクターが手掛ける「アディクション(ADDICTION)」は、鮮やかな色が印象的で、リアルなブランドでも普通に出てきていますよね。
浅野:これまで日本の百貨店の化粧品フロアに、あれだけの色が並んでいるってことがあまりなかったから、楽しくなりますね。
福崎:確かに。新しいトレンドが出てくると売り上げにもつながりそう。それでほかNYではどれが好き?
北坂:「アナスイ(ANNA SUI)」が超かわいかった。
浅野:私も思った!
北坂:羽が出てきてて、一つは蛍光っぽいピンクをぼかした上に羽を白いラインで書いて、目の下に星のグリッターをつけて。あと黄色いマットの真ん中にすっごいラメのシルバーのラインを走らせたりしていて。あと、目の下だけに星を付けたり。髪の毛も、これまで「アナスイ」の洋服って黒、紫みたいなイメージだったのが、淡いピンクのネグリジェみたいなアイテムが登場していて。だから髪の毛も寝起きのグチャっとした感じ、寝起きの少女のようなメイクでめちゃくちゃかわいかった。
福崎:全部はできなくても、小さな星とかつけるのマネできそうだね。
浅野:東京コレクションで入っていた「M・A・C」が目頭にハートつけてて。すっごくかわいかった(「ノントーキョー(NON TOKYO)」)。
北坂:あと、「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」もピンクと緑でかわいかった。これもモデルによって違うんですよ。超ナチュラルな子もいれば、ちゃんとメイクしてる子もいて。
浅野:これまでの個性を生かすっていうのは、ただナチュラル、ある意味何もしないっていうのだったけど、今はメイクで個性を出すって感じですよね。
北坂:そうかもしれないですね。ヘアも結んでいる子もいれば、そのままの子もいたし。
福崎:浅野さんは、特集を担当したんだよね。ロンドン、ミラノ、パリをまとめてみてどうだった?好きなメイクは?
浅野:「ミュウミュウ(MIUMIU)」がすごくかわいかった。ちょっとエッジの効いたかわいさがあると思うけど、今季はさらに個性的というか。スマッジした汚したアイラインとか、髪型も言い方は変かもですが“スケバン”みたいというか。前にボリュームがある雰囲気が好き。あとモード好きだから、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「サカイ(SACAI)」「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」が好きでしたね。
福崎:目元フォーカスって続いているよね。
北坂:目元フォーカスはずっと続いてますが、それ以前は口元だったし、目元か口元かどっちかにフォーカスされることが多い印象ですよね。今まではランウエイはすごい超遠い存在で、舞台メイクに近くてリアルに落とし込めなかったけど、最近はインスタで見れるようになってるからか、こういうのでインスピレーション源にする若い子も増えていると思います。だからか、どこかにリアリティーがないといけないから、目を強くするなら、肌はそのままとか口元はナチュラルにとかになるのかもしれないですね。
福崎:しばらく目元が続いているから、そろそろ口元にフォーカスが戻ってくるかもかな。北坂さんはそのほか、どれが好き?
北坂:「シャネル(CHANEL)」ですね。
浅野:かわいかった!そのままマネできちゃうメイクだなって。
福崎:デザイナーが変わったこともあるのかな?
北坂:大御所のメイクアップアーティストのパット・マグラス(Pat McGrath)が好きだから「ヴァレンティノ(VALENTINO)」も派手だけどかわいかったです。
あとは、ヘアは太めのヘッドバンドをコレクション会場でもみんなつけてました。
福崎:ライターの宮田理江さんのコラムでも、カチューシャがはやるって書いてありましたね。
北坂:ヘアアクセサリーは大きなヘアピンやヘッドバンドとかがでていましたが、多様性だからか、髪の長さがどうだとか、ストレートがどうだとかはトレンドとしてなかったかもですね。
浅野:バズカット(「サンローラン(SAINT LAURENT)」)とかスキンヘッド(「ヨウジヤマモト」)の子もいたし。
福崎:自分ではどのヘアスタイルしたい?
北坂:超ピタっていうのかわいい(「エルメス(HERMES)」)。バックステージ入る度に思うのは、自分のメイクが濃いいなあってこと。もっと減らそう減らそうと思うんですよ(笑)。個人的にはこのショートボブのパッツン(「サカイ」)とした感じが好き。これ似合ったらかっこいいと思う。
浅野:サイドパーツのピチッとしたのは象徴的で結構多かったなあって思って。私は派手なものに目がいってしまうけど、これとか(「アンリアレイジ(ANREALAGE)」)、クルってなっててかわいいですよね。
福崎:なるほど。本当にヘアメイクもダイバーシティーだね。個性の発信に、自分なりのヘアメイクにチャレンジしてみてほしいですね。