ファッション業界は今、韓国の5人組歌手グループBIGBANGに夢中だ。正確に言えば、韓流ブームが下火になりつつある日本というよりもアジア、そしてヨーロッパやアメリカなど、世界のファッション業界で注目度を増している。その勢いを示すように最近では、パリ・メンズ・コレクションで各国メディアに囲まれたり、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンの投資ファンドLキャピタル・アジアが2014年9月、所属事務所のYGエンタテインメントに出資するなどの事例が起きている。彼らがファッション界で人気の理由を業界関係者に聞いた。
BIGBANGがスタイルアイコンな理由のひとつには、独自の個性がスタイルとして確立されていることがあげられる。原色や派手な柄のストリートからファーや装飾などのディテールを凝らしたラグジュアリーなモードまで、着こなしが難しいアイテムさえさらりとスタイリングしてみせる。BIGBANGがよく訪れるセレクトショップ「キャンディー(CANDY)」の柳翔吾フェイク トーキョー チーフディレクターは、「気鋭デザイナーにもいち早く目をつける。『クリスチャン ダダ』を筆頭に、最近では韓国の『ナインティナインパーセントイズ(99%IS-)』や、『へイン・セオ(HYEIN SEO)』など、メンバーが着た服は確実に売れる。メンズファッション誌以外のプロモーション手段が、BIGBANGのお陰で広がった」と彼らのメディア効果についても語る。
また、BIGBANGが日本デビュー以前から足繁く東京のセレクトショップに通っていた点も注目だ。前述「キャンディー」のほか「リステア(RESTIR)」「ラブレス(LOVELESS)」などには、BIGBANGとして知られる以前から、個性的でおしゃれなメンズ顧客としての認知があった。「リステア」でBIGBANGのアテンドを担当する小柴知之ブティック マネージャーは、「最初からオシャレというより洗練度がジワジワと増していったように感じる」とその変遷を語る。柴田麻衣子「リステア」クリエイティブディレクターも、「彼らは服に着られるのではなく着ている。ファッションは付け焼刃じゃできない。おめかしはすごく大変な技だから、美意識も高くて投資も惜しまない、果てしない努力があったんだと思う。彼らの外見だけでなく中身もフォローすべき」と分析する。
そんなBIGBANGのファッションリテラシーには、会社黎明期から音楽と同様にファッション道を探求してきた所属事務所YGエンタテインメントの社風も影響している。そのキーマンである同社スタイリストチームのトップで、BIGBANGのスタイルディレクターを務めるジウン取締役は、「アーティストたちがファッションに興味を持つように誘導している。デザイナーの名前を教え、特徴を説明する。アーティスト自身がどれだけ受け入れるかによって、着こなし方も変わってくる」と指針を話す。