11月15日、東京・日本橋馬喰町に「さまざまなクリエイターが集まる個の集合体」を目指す“コレクティブ・ホテル”、「DDDホテル」がグランドオープンした。同地で運営していた創業37年のビジネスホテルをリノベーションしており、客室は180超から122へと大胆に削減。その分、1室あたりの面積を一部拡大、アートギャラリーや注目若手シェフによるレストランなどの客室以外のスペースを増やしている。同ホテルを手掛けているのは衣料品の老舗現金問屋の丸太屋。リノベーションを指揮したのは、丸太屋の後継者であり、子会社ログズの社長を務める武田悠太だ。
日本橋馬喰町や隣接する日本橋横山町は、昔から現金問屋が集まる繊維の街。かつては全国からファッションの小売店関係者が買い付けに集まったが、浅草や東京スカイツリーなどの観光スポットからも近く、現在では海外観光客が多数集まるようになっている。DDDホテルの前身もベッドとユニットバスのみのコンパクトな客室が並ぶビジネスホテルだったが、設計事務所ケース・リアルを率いる二俣公一を空間設計に起用し、フルリノベーションを実施した。
ユニットバスは全室で廃止し、水回り設備を充実。「配管工事などが非常に煩雑なため、通常、ホテル客室の区割りを変えることはあまり行われない」(武田ログズ社長)というが、一部客室は区割りを変えて拡大、過ごしやすさを追求している。宿泊料金は1人あたり7000~8000円。スイートルームは1室で3~4万円だ。
“コレクティブ・ホテル”を標榜する通り、各分野の面白いクリエイターをホテルに引き込んでいる点がポイントだ。立体駐車場だった場所はアートギャラリーの「パーセル」に変更し、現代美術やストリートアートを中心に展示。ギャラリーの企画やコーディネーションとして、アーティストの高須咲恵とアートコンサルタントの佐藤拓と組んでいる。ホテルのグランドオープンに合わせて、12月22日までは、アーティスト角田純の展覧会を実施している。
ギャラリー横の1階に設けたのは、最大8席のフレンチレストラン「ノル」。若手料理人集団の「実験的キッチン空間」だといい、「日本のフランス料理界として、(勤務していたレストランで当時29歳という)最年少でミシュラン2つ星を獲得した」というシェフの厚東創がディレクターを務める。不定期にディナーイベントを開催し、ケータリングやフードアートなどの活動にも取り組む。
2階のフロントデスク横には、カフェ兼バーの「アブノ」を設けた。武田社長が好きでよく通っていたという池尻大橋にあった「P.N.B.コーヒー」のオーナーバリスタ、ピーター・ブル(Peter Buhl)がバリスタを務める。
ログズは、山縣良和が手掛けるファッションの学校「ここのがっこう」に開催場所を提供していることもあって、武田社長は若手デザイナーとの親交も深い。ホテル従業員のユニフォームデザインは「アキコアオキ(AKIKO AOKI)」の青木明子が、客室用ウエアは「ハトラ(HATRA)」の長見佳祐が担当するなど、若手デザイナーのインキュベーションとしての顔も、DDDホテルは持ち合わせている。