ファッション

大友克洋と河村康輔に「AKIRA」のアートウォールから「シュプリーム」コラボまでを聞く

 先日3年ぶりに再開業した渋谷パルコは「WWDジャパン」11月25日号でも詳細をリポートしたように、日本の新たなカルチャーの震源地として注目を集めている。中でも地下1階のギャラリーX(GALLERY X)と4階のパルコ ミュージアム トウキョウ(PARCO MUSEUM TOKYO)は、旬のアーティストによる展示を定期的に行う予定で、記念すべきオープニングエキシビションとして漫画家・映画監督の大友克洋とグラフィックアーティストの河村康輔による「AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRA ART EXHIBITION」が12月16日まで開催されている。

 同エキシビションは、2017年から開業直前まで3度にわたって渋谷パルコの工事仮囲いに掲示されていた「AKIRA ART OF WALL」の集大成として位置付けられるものだ。パルコ ミュージアム トウキョウにはアートウォールの実物や「AKIRA」の原画、河村康輔のコラージュ作品などが展示されているほか、物販エリアも設けられ「レディメイド(READYMADE)」とのTシャツや、「ナナナナ(NANA-NANA)」とのPVCバッグなどのコラボアイテムが並ぶ。さらには大友克洋の私物を集めたという「アキラ キオスク(AKIRA KIOSK)」も設置されるなど、「AKIRA」ファンにはたまらない空間になっている。

 そんなパルコ ミュージアム トウキョウで、アートウォールのスタートのきっかけから、世界中で話題となった「シュプリーム(SUPREME)」とのコラボについてまでを、大友克洋と河村康輔の2人に短い時間だが話を聞くことができた。

WWD:今回の展示のきっかけになった「AKIRA ART OF WALL」について教えてください。

大友:昔から壁に絵を描いていたんですけどね。パルコから話があり、河村君と2人でやることになったんですよ。特に僕の方から企画を持ち込んだわけではないです。

河村:2015年くらいに最初に僕に話が来たんですけど、そもそも企画をいただいた時点から「2人で」というものだったので、大友さんに僕から話をしました。

大友:あくまで公共物だから、そこの確認なども含めると準備段階で半年から1年くらい掛かって、かなり長期的なプロジェクトになりましたね。

WWD:「2人で」ということですが、以前から交流はあったんでしょうか?

河村:12年に開催された「大友克洋GENGA展」(「AKIRA」の全原稿を含む約3000枚の原画が展示された大規模かつ初の原画展)で僕がメインビジュアルをやらせてもらってからですかね。

WWD:企画の段階から全3回にわたり期間を区切って展示内容を変えることは構想されていたんですか?

大友:展示の方法は最初から決まっていたわけではなくて、いろんな案がありました。大きなものを掲示するのではなく、漫画のコマを抽出して毎月張り替えるなどの意見もあったんです。でも、それでは面白くないと思ったのでコマを全て外して、河村君がコラージュしていく方向になったんです。

WWD:漫画はページ内でのコマ割りや流れが重要ですが、そのコマを抽出して並び替え、新たな作品を生み出す上で難しかったことはありますか?

河村:例えば使いたいコマがあっても頭や肩がコマの枠で切れているなど、全身が描いてあるコマって意外と少ないんですよね。でもその足りない部分を僕が描こうにも描けないし、かといって大友さんに描いてもらうわけにはいかないじゃないですか(笑)。だからつなぎ目をビルで隠そうとするんですけど、人物の横にいきなりビルが並んでも変なので、違和感をなくすためだけのコマを探すこともあり、漫画として全体を読むというよりも1コマずつの作品を絵画として見ていく感じです。「AKIRA」は全2500〜2600ページなんですけど、僕の場合はコマで読んでいたので、5倍の1万枚くらいの作品を隅々まで見る感じでしたね。

「AKIRA ART OF WALL」にはビルの崩壊シーンがあるんですけど、実は1つのコマをただ使っているわけではなくて、いろいろなシーンのビルや瓦礫を組み合わせて作っているんです。大友さんの1コマにはいろいろなものが凝縮されていて、何をどこに使えるかはその都度変わってくる。だから瓦礫の一つ一つも「これはきれいに使えるかも」って見ていました。

WWD:大友さん的に使ってほしいコマなどはあったんでしょうか?

大友:「これがいいんじゃないの」くらいのアドバイスは出しましたよ。さすがに自分で描いているから覚えているので(笑)。

河村:それが本当にすごくて、だいたい覚えてるんですよ。僕も1万枚の絵を何十回も見ているのに「確か●巻の●ページあたりにこういう絵があるから」ってピンポイントで教えてくれたら実際にあるんです(笑)。

WWD:おふたりにとって今回の作品がご自身で最も大きい作品でしょうか?

河村:そうかもしれません。

大友:仙台空港にある原画の巨大レリーフ作品も大きいですけど、横の長さでいったら今回のパルコが1番大きいですね。

WWD:今回のように、2人のアーティストによるコラボプロジェクトはあまり見られませんよね。

大友:そうですね。だからこそほかの人もこういう機会がもしあれば、パクリとは言わないのでやるべきだと思います。

WWD:最後に「シュプリーム」とのコラボはどういった流れで決定したんでしょうか?

大友:あれは河村君が持ってきてくれた仕事なんですよ。僕の窓口をやってくれているので(笑)。

河村:僕に話が来て、大友さんに「やりましょうよ」ってずっと言ってたらOKが出たんです。

大友:あれも発売まで長かったね。「AKIRA」のTシャツなんて作りたくないって言ってたから。

河村:2年かかって説得したら「じゃあデザインして」って言ってもらえて、発売まで1年くらいかかったから実質3年かかりましたね。

WWD:「シュプリーム」とのコラボがファッションブランドとの初めてのコラボだったんですよね?

大友:そうですね。でも前に「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」との仕事でDMに「AKIRA」のイラストを提供したことがあったんですが、実はそのときにもTシャツを作る話があったんですよ。でもいろいろあって実現には至らず、残念でしたね。

■AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRA ART EXHIBITION
日程:11月22日〜12月16日
時間:10:00〜21:00
会場:渋谷パルコ4階 パルコ ミュージアム トウキョウ

日程:11月22日〜12月8日
時間:11:00〜21:00
会場:渋谷パルコ地下1階 ギャラリーX
入場料:1000円(共通)

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。