1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。
今日のニュース:P.7『生理に焦点を当てた大丸梅田店の覚悟』
1 / 1
読み解きポイント:「選択肢が多い時代に、メディアは何を担うか?」
ニュースのポイント
大丸梅田店が11月22日に開いた“女性のリズムに寄り添う”新ゾーン「ミチカケ(MICHIKAKE)」が注目を集めている。これまでタブーとされてきた“女性の性と生理”に焦点を当て、ランジェリーや生理用品、ハーブティーからサプリ、セルフプレジャーアイテムまで取り扱っている。社内コミュニケーションのために企画された“生理バッジ”が賛否を呼んだが、商品ラインナップは消費者からの共感を得ておりオープンからの1週間は好調な出だしだという。
Azuはこう読む!
この話題に関しては以前も書きましたが、今回は施策に関してではなく報じられ方について、ちょっと個人的にモヤっとしてしまった「メディアの在り方」について書ければと思います。
最初の報道から一気にTwitter上で火が付き、思わぬ方向へ議論が進んでしまったこの話題。ただのフロアオープンのニュースとそれに付随する施策というライトな発信だったにも関わらず、それを受け取った人が一部のみを切り取り、それがまた切り取られ、誤解を生み……というのがネットの炎上の正体です。
炎上は正直防ぎようがありません。どんなニュースに対しても十人十色の意見があるし、同じ言葉でも読み取り方は人によってかなり差があるからです(この連載もその一種です)。じゃあこの大炎上時代にメディアがすべきことは何か、というのを考えなければと思いました。
前回は批判されているポイントをまとめましたが、多くは事実が正しく伝えられていないことによる誤解が原因です。対メディアの初動のコミュニケーションが少しずれただけで「こんなにも趣旨とかけ離れた認識になってしまうのだなーー」と傍観していたのですが、ふと自分が「伝える側」だったらどう対応すべきだろう?と思い、モヤっとしてしまったのです。
炎上を見るたびに思うのが、はたして炎上させたのは誰なのか?ということ。一度炎上してしまうと、「ネタ元が仕込んだ炎上商法だ」とありもしないことを必ず言われ、誹謗中傷までされてしまいます。取材対象が語った本来の意図と、読者の認識が大幅にずれた場合、“媒介者”であるメディアはそれを修正する責任があると思っています。
今回は炎上からの後追い取材、そこからの再燃といった綺麗なネット炎上コースでしたが、最もモヤっとしたのが「後追い取材」の部分です。すでに話題になっているネタだからPVを稼げるのがわかっていたのだろうけど、「その見出しはミスリードでしょう」というタイトルをいくつか見かけた上に、「他メディアからの情報を拾っただけで、担当者への直接的な取材がないまま掲載したな?」と思ってしまうような薄っぺらい記事も見かけました。
ウェブメディアはクリックを導くタイトルが命です。字数制限があるため簡潔に書かなければいけません。そしてタイトルだけを見て本文を読まない人がかなりの数いることは、SNSのリーチや拡散などのアクションと、記事のクリックやPV数を比較すればすぐわかります。数字は嘘をつきません。
記者とSNS運用者は違う場合がほとんどかと思いますが、少なくともウェブ記事を書く人は、書いたら終わりの時代ではないことは知っているはずです。その記事をいかに届けるか、そして読者に考えてもらうか。問題提起なら誰でもできるこの時代に、メディアとしてそこまで考えられた記事がどれだけあるのか、ちょっと頭を抱えてしまいました。
最近「選択肢」という言葉をよく耳にします。「ダイバーシティー」をかなえる上で選択肢を増やすことは欠かせない行動の一つですが、人間って、選択肢が多ければ選べるというものではないんですよね。
極端な話、選択肢が増えることで困る人もいます。「Cという選択肢が気に食わない」とか、「多くて選べない」とか。だからまずは、選択肢の必要性だったり、一つ一つの理解や存在そのものだったり、選ぶ判断基準を培う土壌などは、大勢の人に情報を発信できるメディアが提供しなければと思うのです。だけど今、この状況でそれができる気が全くしません。
選択肢を増やそうと努力する企業や個人がたくさん出てきている中で、メディアがすべきことは何でしょうか。その選択肢を広めることだけではなく、どう選べば良いのか?なぜ選ぶ必要があるのか?を分かりやすく伝えることだと思います。
考えることを放棄した人たちを、数字を取るために利用し、扇動している。メディアがどうしてもそう見えてしまう時がある。もちろん記者たちが信念を基に取材して、接続詞の一つにまで気を配らせた素晴らしい記事も存在する。だから余計に悲しいのです。
Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne