ファッション

ストライプが中国で進める“ニューリテール”の実態を公開 4~6級都市ではフランチャイズ出店を加速

 ストライプインターナショナルは、中国法人ストライプチャイナの陶源(タオ・ユアン)総経理による、「ストライプの中国における成長戦略」と題したメディア向け説明会を行った。副題は「ニューリテールの実態」。実店舗にカメラやセンサーを設置し、オンラインとオフライン(実店舗)をつなぐ中国の“ニューリテール”の在り方は日本でも既によく知られてはいるが、説明会では同社がアリババやJDドットコムといった中国ウェブサービス大手と組み、どんなデータをどのように生かしているのかを公表。また、人口100万人クラスの4~6級都市でフランチャイズ(FC)出店を強化する計画も明かした。

 ストライプインターナショナルは2018年にアリババの日本法人と戦略的パートナーシップを締結。以来、ニューリテールについて共同研究を重ねてきた。具体的には、アリババのクラウドや社内業務効率化アプリ“DingTalk”を導入し、オンラインとオフラインのデータ融合を推進してきた。

 アリババとの取り組みにおいて「最も重要なポイントは、(データを)オンラインからオフラインにスイッチできること」と陶総経理は話す。例えば、アリババのECモール「タオバオ」アプリの「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC & ECOLOGY以下、アース)」の画面から、顧客はすぐに実店舗の販売員にチャットで問い合わせが可能。優良顧客から順に、商品の試着予約や取り置きに応じている。チャットは“DingTalk”と連携しており、空き時間の販売員などに自動転送され、繁忙期で販売員が答えられない際は一定時間でコールセンターや本部に転送される。

 そうした仕組みによって、19年2~7月はアリババでのEC売り上げが前年同期の2倍に、既存店売り上げが同1.5倍になったという。

優良顧客を顔認証で割り出しVIPサービス

 このように、アリババとの取り組みでは「オンラインからオフラインへの送客には手応えがあったが、まだ実店舗での顧客行動のデータ化ができていなかった」。そこで、アリババに次ぐ中国EC大手のJDドットコムと組み、実店舗にカメラやセンサーを設置しての顧客情報の収集を19年4月に開始。10月に上海の「アース」最大店にカメラを導入したことで、ストライプチャイナが運営する13店全てにカメラを導入し終えた。「『アース』最大店は35台のカメラを設置し、同時に200人までデータを収集できる」という。

 説明会では、カメラやセンサーを使って集めたデータの数々を公表。例えば、店舗俯瞰図にサーモセンサーによる温度マップを重ねたデータは、店内のどの位置に重点的に客が集まるのかを示したものだ。これによって、「どんな商品陳列をすれば売り上げが伸びるかを、1週間ずつテストすることができる」。このようなVMDへのデータ活用は日本にも応用できそうだが、日本と大きく違うのは、データの中で客の個人情報が完全に特定されていること。「政府機関が使っているのと同じ精度」のカメラで顔写真から個人を割り出す。それにより優良顧客が店内に入れば即座に店長にアプリで知らせが届き、店内奥のVIPルームでケーキや日本のファッション誌でもてなすのだという。

 ただし、そのような顔認証については、会員登録の際に了承を得た客のみに実施しているという。また、これら各店の店頭データは本部にもリアルタイムで共有され、遠方の店などは本部から指示を出す。20年2~7月のうちに、商品自体にもブルートゥースセンサーかRFID(電子タグ)を導入し、更なるデータの精度向上を目指す。

中国政府の「大衆による起業」政策に呼応

 出店先を考えるにあたっても、JDドットコムから共有される各地のショッピングモールの客層データを活用する。客層の年齢、性別だけでなく、学歴、職業まで全てデータ化されており、職業は「高級サラリーマン」「中~下級サラリーマン」「資産家」など細かく分かれる。陶総経理によれば、「中国人は、食べるもの、買うもの、住む場所のレベルが連動している。どれか一点だけ背伸びして消費するということがない」ため、そのショッピングモールの飲食店の平均客単価や、周辺地域のマンションの区画単価などから、自社のブランドが出店するべきモールかどうかを割り出すという。「以前は、出店は勘に頼るかマーケティングリサーチ会社からデータを買うしかなかった。それが、JDドットコムのデータを元に考えられるようになった」。

 ストライプチャイナは今後、中国政府が進める「大衆創業、万衆創新(大衆による起業)」政策に沿って、4~6級都市でのフランチャイズ(FC)出店を進める。「20年に、FCは少なくとも50店出店する」考えだ。4~6級都市とはいっても、中国だけに人口は100万人規模。「アパレルビジネスに参入したいが、経験もチームも商品もないというオーナーをパッケージでストライプが支援する。出店後、黒字化したタイミングでFCオーナーに引き渡す。既に同プログラムを実施しており、これまで早くて1カ月、遅くて半年で黒字化し、オーナーに引き渡した」という。「アパレルビジネスには明るくなくても、地元の有力ショッピングモールには顔がきくというオーナーもいる」。そういった層をFCとして取り込めば、モールの家賃も下がり、「われわれにもメリットがある」。実際に、昆明などでそういったケースがあったという。

 陶総経理は、コンピューターメーカーのデルの北アジア担当、日本トイザらスのEC本部長、ドイツ拠点のスーパー、メトロの中国法人でEC事業本部総経理などを経てストライプチャイナに2018年3月入社。日本語も堪能だ。

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