ファッション

シェア自転車ブームは過去のもの?完全キャッシュレスを体験! 1年3カ月振りの上海出張をプレイバック

 12月19~21日、中国・上海に出張してきました。上海は2018年9月の出張以来ですが、そもそも中国本土に降り立つこと自体今回でようやく2回目の初心者です。景気はかなり減速しているとはいえ、日本に比べたら成長著しい中国だけに、この1年3カ月の間にも上海の景色は結構変わっていてビックリ。そして、「今更かよ!」といわれそうですが「この街、面白い!」「一回住んでみたい!」とも思ったり。というわけで、刺激いっぱいだった上海出張中のできごとを徒然にプレイバック!

もはや
東京よりも断然都会?な上海

 そもそも、今回の出張はアダストリアのライフスタイルブランド、「ニコアンド(NIKO AND…)」が中国本土に初出店するというので、その取材がメインでした。詳細はこの記事を参照いただきたいですが、上海に駐在して同事業を指揮しているアダストリアの北村嘉輝取締役は、住んでみて「上海のイメージがかなり変わった」そう。「上海は東京より断然都会だと思う。(富裕層からその日暮らしの人まで)こっちはピンキリですが、(ターゲットとする層の)生活水準は日本より高いのでは」と話していたのが印象的です。「ニコアンド」上海店は、グランドオープンの21日は開店前に約200人が行列するなど、上々のスタートを切ったよう。ちなみに、コミュ力最強の北村取締役は現地スタッフから「世界のキタムラ(笑)」と呼ばれ、慕われているようです。

放置自転車激減 
変化スピードにおののく

 昨年9月に上海を訪れた際は自転車のシェアサービスが乱立しまくっていました。パイを奪うために各社とにかく自転車を投入し、それゆえ道に放置自転車があふれまくって歩けない!というレベルだったのですが、今回はかなりスッキリ。東京のシェア自転車くらいの見え方に落ち着いていました。「おお、敗者は市場から退場し、勝者だけが残って秩序が生まれたのだな」と思いきや、駐在の方いわく「全プレーヤー共倒れ」だそうで。いわく「とにかく競合他社に先んじてパイを獲るため、豊富な資金調達を背景に各社爆安でサービスを提供した結果、どこも利益が出せる構造にならず、ダメになった」。なんと……。中国市場の変化のスピードの速さをまざまざと感じた事例でした。

現金は1度も使わず! 
キャッシュレスを堪能

 「アリペイ(ALIPAY)」がとうとう旅行者にも開放されました!昨年9月は中国に銀行口座がある人しか「アリペイ」も「ウィーチャットペイ(WeChat Pay)」も使えなかったんですが、この秋から旅行者にも限定的に開放さています。その恩恵にあずかり、今回の出張では1度も現金を使っていません(クレジットカードは一回使った)。路上のおじさんから傘を買う際にも、おじさんが持っているアリペイのQRコードをスキャンすればいいだけなので超ラクチン!しかし、これは旅行者ゆえですが手持ちのWi-Fiルーターの調子が悪く、支払いをしたい時にWi-Fiがつながっていなくて焦るというケースも。便利な反面、もうスマホを忘れたり、なくしたりしたら生きていけない世界なのだと実感。

「ステュディオス」で
出会った野心溢れる若者たち

 今年の8月に、ステュディオスは中国本土初の店舗を上海にオープンしています。場所は上海における青山(だと私は思っている)新天地。お店に入ると、「いらっしゃいませ」の声。私が日本人だと分かったから日本語なのかしら?と思いきや、日本発のセレクトショップとして、どのお客さまにも「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」を徹底しているのだとか。こちらの店の尹天沢(イン・テンタク)店長は、「青年よ、大志を抱け」を地で行く青島出身の27歳。18年度の「ステュディオス」MVP販売員でもあります。彼のいい意味でギラギラした姿勢、とても面白くて刺激的だったのでまた後日インタビューとしてご紹介します。

“ニューリテール”は
皆がやってるわけじゃない…?

 先日、ストライプインターナショナルの「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC & ECOLOGY以下、アース)」を日本で取材した際、上海・中山公園にある大型店で行っているニューリテール(小売り×テクノロジー)施策を紹介されました。「店内にカメラを30台導入し、顔認証でVIP客を特定。VIP客は店に入った瞬間に店長のスマホに連絡がいき、奥のVIPスペースでもてなす」とのこと(詳しくはこの記事参照)。その店舗を訪問してみたところ、確かにカメラが天井のそこかしこに設置してあります。奥のVIPスペースには日本の雑誌が豊富です。こういうニューリテールな売り方、中国ではどこもやっているんだろうと思ってモール内にあった他店も見てみましたが、あれ?意外とカメラを設置してる店って少なくない?特に現地のブランドって、あんまり設置してないな……。というわけで現地に詳しい某駐在員さんに聞いたところ、「ニューリテールは小売りの未来の1つを指し示すものではあるが、現地の大多数の企業は取り組んでいませんよ。もしくはやれていない」とのことでした。拍子抜け!

アリババのスーパーは
カエルやスッポンもフレッシュ!

 現地企業はあまりやっていないとなると、「じゃあニューリテールって何なんだよ」というややガッカリな気分になりますが、今更ながら今回ようやく訪問したアリババの生鮮スーパー「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」は刺激的でした!このスーパー、生鮮というECのブルーオーシャンにアリババが満を持して飛び込み、「ニューリテールという概念でわれわれはこんな価値を提供していきます!」というのを体現している(そもそも、ニューリテールはアリババが提唱した言葉)業態です。ネット注文から30分以内で商品が自宅に届く、買い物客の頭上をEC用のお買い物袋がレールで運ばれていくというこちらの店の感想はまた改めて書きますが、このスーパー、店頭でカエルとかスッポンも売ってまして。めっちゃ元気なので水槽から飛び出してこないかとヒヤヒヤしました(水槽に蓋はない)が、いやー、カエル、スッポンに限らず、生鮮品をフレッシュに保つために猛烈なサプライチェーン改善の努力があり、それとニューリテールは混然一体なんだなと思いを馳せた次第です。

広大な国土が生む
ダイナミックさに体力を奪われる

 先ほどから何度も出ている「現地に詳しい駐在員さん」とは、大丸松坂屋から上海の新世界大丸百貨に駐在されている洞本宗和マーケティング部部長のこと。今回お時間をいただき、中国の小売り事情についていろいろお話うかがってきましたので、そちらも追ってインタビューとして記事化します。ここでは洞本さんが働いている新世界大丸百貨をご紹介。外灘(ワイタン)という、租界時代のレトロなビルが立ち並ぶ上海きっての観光地にあるんですが、とにかく建物が大きい。そして驚いたのはガラス張りになった天井を見上げるとそこにLEDビジョンが付いている。同店に限ったことではありませんが、上海の建物は概して天井が高く広く、駅も広いから乗り換えが超大変。何もかもを大きくすることで威厳を出しているみたいな部分もあるんだと思いますが、国土が広いとあらゆる発想がダイナミックになるんだな、コンパクトな都市設計に慣れた身には堪えるな…としみじみ。

フードデリバリーサービスが
発達しすぎて大変

 「ニコアンド」のお店の向かいに、「ヘイティー(HEYTEA)」というチーズティーで有名なお茶屋さんがありました。混んでなさそうだし、せっかくだから飲んでみようかなと思って注文。「一番人気のお茶ください」と英語で伝えたのですが、注文後、待てども待てども私のお茶が出てこない。こちら、店頭は空いていたんですが、日本でいうところのウーバーイーツ(Uber EATS)的サービスのバイクライダーさんがひっきりなしに取りに来るんです。しまった……と思いつつ、原稿を書きながら待つことなんと1時間。商品を取りに行くとそこにはチーズティーとは全く違うグレープフルーツ×ジャスミンな飲み物が。美味しかったからメニューが違うことはもういいんですが、1時間待ちって厳しいなと。私もアプリから注文すればよかったんでしょうが、そのためにアプリをダウンロードするのはハードルが高い。そしてダウンロードしたとしても中国語というさらに高いハードルが……。この街をエンジョイするには、中国語が必須です。英語じゃダメ。

世界で2店舗目の「ナイキ」
ショップの人気っぷりに酔う

 「ナイキ(NIKE)」がニューヨークに次いで世界で2番目に作ったという、デジタルとリアルの融合店舗「ナイキ ハウス オブ イノベーション(NIKE House of Innovation)」にも行ってみました。場所は人民広場という、上海における(私が思うに)原宿・竹下通り的な場所。上でご紹介した、新世界大丸百貨がある外灘の隣駅です。幅広い商品をそろえるとともに、スニーカーをカスタマイズできるコーナーなどがあるんですが、こちら金曜の20時過ぎに訪れたところバーゲンセール並みの混雑っぷり。特に3階のスニーカーコーナーは自分のサイズを出してもらうのにも一苦労で、残念ながらデジタルとリアルの融合を体感するまでに至らず。混雑に酔ってそそくさと退散しました。空いてそうな時間に行くのがオススメです!

「ジーユー」新ラインは
KOLを獲得できるか

 出張と同じタイミングで、「ジーユー(GU)」も陸家嘴(ルージャーズイ)に出店していたのでそちらの店も訪問。陸家嘴は川を挟んで外灘の向かい側、あの球体モチーフが特徴的なテレビ塔のふもとの街です。「ジーユー」は20年春、18~24歳向けの新ライン“ミックスマニア”を立ち上げるんですが、こちらは「アジア地区のKOL(キー オピニオン リーダー いわゆるインフルエンサー)の獲得」も狙ったラインです。それゆえ、日本に先駆けて上海で売り出すというので店頭の雰囲気をチェック。「ジーユー」の中国本土への出店はこちらで13店舗目といい、ここは特段大きな店舗というわけではないですが、“ミックスマニア”は店頭の一画にしっかり陳列されていました。ちなみに上海への出店は1年1カ月振りだそう。

「シュプリーム」の
ニセモノショップが一等地に…

 「ニコアンド」が出店したのは、上海における新宿もしくは渋谷(だと私は思っている)淮海中路(ワイハイジョンルー)。「ユニクロ(UNIQLO)」と「ジーユー」の複合旗艦店や「無印良品」大型店などもある商業一等地です。同地域を歩いていると、道沿いに「シュプリーム(SUPREME)」を発見!……しかしなんだかおかしい。「シュプリーム」なのにセールをしている。中国の転売ヤーは「シュプリーム」を買うために渋谷の店舗で警備員を殴ってニュースになったりもしているのに、なぜ上海ではセールするほどモノが余っているんだ……?と思っていたら、他紙の上海駐在員さんに「あの店はニセモノだよ」と教えてもらいました。どうりで店先に、「シュプリーム」っぽくない超ファンシーなクリスマスデコレーションとか貼っているわけですね!いつ通っても空いていたので、現地の方にも「ニセモノ」だとすっかり浸透しているように見受けられました。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。