【4ページ目】CHLOE(クロエ)
■CHLOE(クロエ)のはじまり
1952年、ギャビー・アギョン(Gaby Aghion)がオートクチュールの堅苦しさから女性を解放することを目指してメゾンを設立。ブランド名は自身の名前を使うのではなく、フェミニンで柔らかな響きと丸みのある文字がお気に入りだったという「CHLOE」を選んだ。上質な生地を使ってサイズ直しをほぼ必要としないフェミニンで魅力的な服を作るというビジョンを、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)らが継承し、世界へ拡大する。2021年にはラグジュアリーメゾンとしては初のBコープ認証を取得。“人と地球にとって、有意義な影響力を持つ、美しい製品をつくる”ゴールを掲げている。
■CHLOE(クロエ)の歴史
1952年、ギャビー・アギョンは小規模なコレクションをデザインし、オートクチュールで働いていた裁縫師を雇い、「クロエ」をスタート。58年、パリの老舗、カフェ・ド・フロール(Cafe de Flore)で初のコレクションを発表。オートクチュールに代わるものとして、上質な生地と手の込んだディテールをゆったりとしたシルエットで仕立てたエレガントでモダンなウエアを提案した。50年代は、アーティスティック・ディレクションを手掛けるギャビーの下で、ジェラール・ピパール(Gerard Pipart)やマキシム・ドゥ・ラ・ファレーズ(Maxime de La Falaise)、ミシェル・ロジエ(Michele Losier)、グラジエラ・フォンタナ(Graziella Fontana)、カール・ラガーフェルドといった若い世代がビジョンを引き継ぐ。
60年に実用的なシャツドレス“アンブラン(Embrun)”、62年にアイコニックなシルクブラウスを発表。65年、「クロエ」に加わって1年のカールが66年春夏コレクションで、ボヘミアンシックなドレス“テルトゥリア(Tertulia)”をデザイン。66年にはヘッドデザイナーになる。72年には、初のブティックをパリ7区にオープン。
75年1月、カールが専任デザイナーに就任(〜84年春夏)。4月、ブランド初の香水が登場。80年代、カールによるトロンプルイユ(だまし絵)をデザインした数々のコレクションが評価される。83年にカールが退任。85年、スイスのコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)の傘下に入る。87年にマルティーヌ・シットボン(Martine Sitbon)がヘッドデザイナーに就く(〜92年)。89年4月、クロエジャパン設立(2001年リシュモンジャパンへ商号変更)。
92年にカールがクリエイティブ・ディレクターとして復帰。90年代は、伝統文化からポップカルチャーまで多彩な文化に着想し、ロマンチシズム溢れるコレクションを披露した。97年、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校(Central Saint Martins)を卒業したばかりのステラ・マッカートニーがクリエイティブ・ディレクターに就任(98年春夏〜01-02年秋冬)。
2001年、フィービー・ファイロがクリエイティブ・ディレクターに就任(02年春夏〜05-06年秋冬)。姉妹ブランドとして「シーバイクロエ(SEE BY CHLOE)」をスタートするとともに、バッグやスモールレザーグッズ、靴のコレクションを立ち上げる。03年、リシュモン ジャパン クロエCEOに三木均氏が就く(〜11年)。07年、ブランドを代表する香水「クロエ オードパルファム(CHLOE EAU DE PARFUM)」を発売。08年、スウェーデン人デザイナーのパウロ・メリム・アンダーソン(Paulo Melim Andersson)の短い任期を経て(07-08年秋冬〜08-09年秋冬)、ハンナ・マクギボン(Hannah MacGibbon)がクリエイティブ・ディレクターに就任(09年春夏〜11-12年秋冬)。11年、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)が後任に就く(12年春夏〜17-18年秋冬)。
12年、創業60周年を記念したブランドの歴史をひも解く展覧会「クロエ・アティテュード(Chloe Attitudes)を実施。13年、初のスキンケアシリーズを発売。14年8月、日本法人の藤井勅光CEOが退任。16年、オンラインショップを開設。17年、ナターシャ ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)がクリエイティブ・ディレクターに(18年春夏〜21年春夏)。7月、文化施設メゾン クロエ(MAISON CHLOE)がパリの8区のボーム通りにオープン。9月、表参道ヒルズ1階に旗艦店をオープン(21年リニューアル)。12月、銀座に路面店をオープン。
19年6月、中国上陸5周年を記念し上海でショー。パリ以外の都市での開催は初。3月、日本法人CEOに藤原総一郎氏が就く。10月、ジェンダーの平等を前進させることを目的に、ユニセフ(国連児童基金)と4年間のパートナーシップを結び、「ガールズ・フォワード(GIRLS FORWARD)」を設立。12月、10年から指揮してきたジェフロワ・ドゥ・ラ・ブルドネイ(Geoffroy de la Bourdonnaye)CEOの後任に、メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)のCEOを務めたリカルド・ベッリーニ(Riccardo Bellini)が就任。環境への影響を減らすために25年までのロードマップを設定した環境損益計算書を作成(21年7月に初公表)。
20年4月、インスタグラムで対話やパフォーマンスを発信するプログラム「クロエ・ヴォイシーズ(CHLOE VOICES)」をスタート。6月、ケリング アイウエア(KERING EYEWEAR)とアイウエアのデザイン、生産、販売におけるパートナーシップ契約を締結。同月、“Women Forward for a Fairer Future(より公平な未来のための、女性の前進)”に本格的に取り組み、外部専門家のアマンダ・グエン(Amanda Nguyen)とエリザベート・ラヴィル(Elisabeth Laville)を招へいしてサステナビリティ理事会を発足。12月、ガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)がクリエイティブ・ディレクター就任(21-22年秋冬〜)。
21年1月、国連が定める 女性のエンパワーメント原則に署名。10月、100%自然由来のビーガン香水「クロエ オードパルファム ナチュレル(CHLOE EAU DE PARFUM NATURELLE)」を発売。同月、サステナブルな素材と職人の手仕事を融合する新プロジェクト“クロエ クラフト(Chloe Craft)”などの活動が認められ、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられるBコープ認証を取得。ラグジュアリーメゾンとしては初。
22年1月、ダイバーシティのためのフランス経営者連盟(French Association of Managers for Diversity)に加盟。環境サステナビリティの大手コンサルティング会社クアンティス(QUANTIS)と協業したシューズ“ナマ(NAMA)”を発売。3月、社会的影響の測定ツール「ソーシャルパフォーマンス&レバレッジ(Social Performance & Leverage)」の開発を掲げる。
■CHLOE(クロエ)の主な歴代デザイナー
ギャビー・アギョン:
1921年、エジプトのアレキサンドリア生まれ。戦後オートクチュール全盛期のパリに移住し、シンプルで若々しく、洗練されたラインのファッションをつくろうと「クロエ」を立ち上げた。自身のブランドながら、新しい才能を見出す目にも優れ、ジェラール・ピパールやマキシム・ド・ラ・ファレーズ、カール・ラガーフェルドら有望なデザイナーを集め育成した。13年、フランスのファッションと文化への貢献が讃えられ、レジオンドヌール勲章を受勲。14年、パリの自宅で逝去(93歳)。晩年もブランドへの情熱は衰えることなく、ショーにほとんど欠かさず出席していたという。
カール・ラガーフェルド:
ドイツ・ハンブルク出身。52年、パリに移り名門リセ・モンテーニュに進学。54年、インターナショナル・ウールマーク賞を受賞。その後、ピエール バルマン(Pierre Balmain)のアシスタントとして3年間働く。57年に「ジャン・パトゥ(Jean Patou)」に移る。64年、「クロエ」に入る(75年1月〜83年専任デザイナー)。65年、「フェンディ」にデザイナーとして就き、ウエアと毛皮部門、広告ビジュアルを手掛ける。83年に「シャネル」のオートクチュールとプレテポルテ、アクセサリーのアーティスティック・ディレクターに就任。84年、自身のブランドを設立。92年「クロエ」に復帰(〜97年)。19年2月19日死去。
ステラ・マッカートニー:
イギリス・ロンドン生まれ。1995年ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校卒業。97年「クロエ」のクリエイティブ・ディレクター就任。ケリング(KERING)とのパートナーシップにより50/50のジョイントベンチャーでステラ マッカートニーを設立し2001年10月にデビュー。04年アディダス(ADIDAS)と長期パートナーシップ締結。18年4月からケリングの保有していた50 %の株式を取得し独立企業に。19年7月、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンとの提携。22年、英国に多大なる貢献をしたとして、大英帝国勲章コマンダー(CBE、第3等)を受章。
クレア・ワイト・ケラー:
イギリス出身。ロンドンにある国立大学ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art)のニットウエア専攻で修士を取得し、卒業後の数週間後にはNYの「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」でキャリアをスタート。その後。「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」やトム・フォード(Tom Ford)が率いる「グッチ(GUCCI)」を経て、05年に「プリングル オブ スコットランド(PRINGLE OF SCOTLAND)」のクリエイティブ・ディレクターに就任。11年6月、「クロエ」のクリエイティブ・ディレクターに。ウエアとアクセサリービジネスを再び軌道に乗せ、クリエイティブかつコマーシャル性にも優れたコレクションは高く評価されてきた。
ナターシャ・ラムゼイ・レヴィ:
2002年、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)率いる「バレンシアガ(BALENCIAGA)」でキャリアをスタート。「エルメス(HERMES)」や「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」のコンサルタントを経て、再びニコラの率いる「ルイ・ヴィトン」ウィメンズのデザイン・ディレクターとして加わった。17年4月「クロエ」に入る。強さを感じるエッジの効いたスタイルで、ブランドの新たな女性像を提案してきた。
ガブリエラ・ハースト:
ウルグアイ生まれ。ORTウルグアイ大学でコミュニケーション学を専攻し、ファッションデザインは独学で身につけた。父の牧場の経営を引き継いだ後、ニューヨークを拠点に自身のブランド「ガブリエラ ハースト」を設立。2015-16年秋冬でデビュー。父の牧場で生産するメリノウールをはじめとする上質な素材を用いたウエアやバッグなどのアクセサリーを提案する。19年1月にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY- LOUIS VUITTON)が擁する投資ファンドのLVMHラグジュアリー・ベンチャーズ(LVMH LUXURY VENTURES)から出資を受け、20年に「CFDAアワード(CFDA Awards)」のウィメンズウエア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー、「ザ ファッション アワード(The Fashion Awards)」環境賞を受賞。20年春夏では史上初、カーボンニュートラルのコレクションを披露。12月、「クロエ」のクリエイティブ・ディレクター就任。21年、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に参加し、講演した。
■CHLOE(クロエ)の成長の要となったラインやアイテム
「シーバイクロエ」:
「クロエ」がバッグやスモールレザーグッズ、靴のカテゴリーを拡充し始めたころ、2001年に姉妹ブランドとして、「シーバイクロエ」をスタート。15年、クレアがリブランディング。12-13年秋冬では、初のショーをオンライン上で開催。13年、初の香水を発売。15年秋、クレアが引き継いだ後19年に、仏カシミヤブランド「エリック・ボンパール(Eric Bompard)」でデザインを手掛けていたエミリー・ハリス(Emily Harris)がクリエイティブ・ディレクターに就任。
“パディントン(Paddington)”
05年春に登場した、フィービーによるアイコンバッグ。横長のフォームとしっかりとしたハンドル、そして象徴的なオーバーサイズのパドロックを特徴とするデザイン。アイコンバッグとしてブランドの名を広めるだけでなく、スモールレザーグッズのカテゴリーの需要を高めた代表的バッグ。クラシカルでモダンなウェッジソールのサンダルとともに、日本でもヒットした。
“マーシー(Marcie)”
10年に登場。クレアが手掛けたアイコンバッグ。丸みを帯びたフェミニンなフォルムに、ノマドなテイスト。ワンハンドルで実用性の高いサイズ感でキャリアウーマンにも人気を集めた。
“ドリュー(Drew)”
14-15年秋冬に発表されたショルダーバッグ。1970年代のブランドスピリットを継承したデザイン。ころんと丸みのある小さめのボリュームに、細いゴールドチェーンが特徴的。
“フェイ(Faye)”
1970年代のフォークロアなムードが溢れる15年春夏にクレアがデザイン。フラップ部分のリングとチェーンがアイコニックなデザインで、カラーや素材もバリエーション豊富に提案された。
“ナイル(Nile)”
2017年春夏コレクションのランウエイでお披露目されたアイコンバッグ。装飾にもなるブレスレットのようなハンドルが特徴だ。
“クロエ C”
2018年春夏〜。四角いフォームにシグネチャーの“C”を大胆に施したデザインが特徴。“C”パーツを好きな色にカスタマイズできるサービスも。
“テス(Tess)”
ナターシャによる2018-19年秋冬に発表。丸みのある形に2種類のストラップ、フェミニンの象徴として「クロエ」が使用してきた〇(丸)をかたどった留め具が特徴。
■公式サイト
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