モンクレール(MONCLER)は、「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」の親会社であるスポーツウェアカンパニー(SPORTSWEAR COMPANY以下、SPW)の株式30%をシンガポールの政府系投資会社であるテマセク ホールディングス(TEMASEK HOLDINGS PRIVATE LTD.以下、テマセク)の子会社ヴェネツィオ・インベストメンツ(VENEZIO INVESTMENTS)から3億4500万ユーロ(約438億円)で取得する。
モンクレールは2020年12月にカルロ・リベッティ(Carlo Rivetti)=ストーンアイランド社長兼最高経営責任者(CEO)がオーナーを務めるリベテックス(Rivetex)が保有するSPW株50.1%分と、リベッティ社長兼CEO一族が保有する19.9%分を合わせた合計70%分のSPW株を買い取り、ブランドを傘下に収めることを発表していた。今回、残りの30%を取得することでSPWを完全子会社化する。一連の取引は、3月31日までに完了する見通しだ。
リベッティ一族とテマセクは、完了日に売却額の50%相当分となる4億250万ユーロ(約511億円)と1億7250万ユーロ(約219億円)の増資をそれぞれ引き受ける。モンクレールの新規発行株は、過去3カ月間の平均価格である1株あたり37.51ユーロ(約4763円)の設定価格でリベッティ一族に1070万株、テマセクに約460万株がそれぞれ発行され、両者は合計で1530万株以上を受け取ることになる。
新規発行された全ての株式には、申し込み後12カ月以内での売却を制限するロックアップ期間が設けられており、そのうち50%にはさらに6カ月間の制限が課せられている。
今回の買収にあたり、リベッティ一族をはじめとするSPWの株主たちは、彼らが引き受けるモンクレールの全ての新規株を、モンクレールの株式を22.5%所有するルッフィーニ パルテチパツィオーネ ホールディング(RUFFINI PARTECIPAZIONI HOLDING)に譲渡する事で合意しており、これによって両社の統合を進めることが狙いだ。同社はレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)=モンクレール会長兼CEOのプライベートカンパニーだ。
モンクレールは一連の計画にあたって、3月25日に臨時株主総会を招集する。また、ルッフィーニ会長兼CEOは引き続きルッフィーニ パルテチパツィオーネ ホールディングを経営し、社名をダブルR(DLOUBLE R)に変更する。ストーンアイランドの買収については、「伝統的な固定観念とは一線を画すラグジュアリーを再定義したい」とコメントした。
一方でリベッティ社長兼CEOは、「今回の買収はイタリアにとって非常に強力なメッセージであり、私もルッフィーニの考えに同意している。両社が力を合わせることで強くなることが重要だ。特に今回の計画では明確な付加価値が生まれる」。両社は統合に取り組んでおり、D2Cの可能性にも注目している。また、米国およびアジアでの市場を拡大し、ネットワークを強化していく。なお、リベッティ社長兼CEOは、取引完了後にモンクレールの取締役会に加わることになっている。