ファッション

憂い、嘆き、寄り添った「ギャルソン」と、風吹く砂漠のレイブパーティーで若々しい「エルメス」 編集長のパリコレ真剣レビュー Vol.5

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 例えば今シーズンの「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のように、ファッションショーでは序盤に暗い現実を描いたとしても、物語は展開するたびに少しずつ明るくなって、終盤はハッピーエンドを迎えることが多い。だが「コム デ ギャルソン(COMME DES GARÇONS)」の2023年春夏コレクションは、序盤に感じたある種の恐怖を終盤までぬぐい去ることができず、物語はハッピーエンドを迎えなかった印象だ。

 冒頭は、まるでフードが巨大な渦やブラックホールのように、「何かを飲み込んでしまうのでは?」と思わせるドレスで幕を開けた。たっぷりとフリルを飾り、その上からレースを叩きつけても、正直感じるのは「恐怖」だ。序盤はブラック&ホワイトを基調に、まるで洋服を上下逆さまに反転したかのような独創的な造形、そして構造の洋服が続く。何かから身を守るようなコクーンシルエットのドレスには、別のドレスやワンピースなどが絡みつくかのように縫い付けられ、洋服の構造は「混迷」という印象だ。サテンで作った黒薔薇や白薔薇から想起してしまうのは、葬送。そこから洋服には色が加わり、花柄がカラフルになることでようやく安堵することができた。

 だが、冒頭の何かを飲み込む巨大なフードのスタイルは、カラフルになってもなお、まだ少し「怖い」。引き続き洋服の構造は「混迷」を極め、そして「コム デ ギャルソン」らしく、ランウエイショーは音楽が突然止まり、あっという間に終焉を迎えてしまう。

 川久保玲は「今の世界を憂い、嘆く。それに寄り添いたい気持ち」と話したという。「恐怖」を感じるフード、「混迷」を極めた洋服、そしてブラック&ホワイトの色使いは、まさに「今の世界」そのものであり、それを「憂い、嘆いて」いるのだろう。そしてきっと、カラフルな終盤は、「寄り添いたい気持ち」だ。寄り添えているかどうか、わからない。寄り添えたとしても、「今の世界」に対する「憂い」や「嘆き」が解決できるとも限らない。そんな正直な気持ちを表現したからこそ、カラフルなルックからもなお、一定の「恐怖」を感じるのではないだろうか?

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