「パタゴニア」は4月25日、軽井沢に直営店をオープンした。日本で23店舗目となる直営店で軽井沢駅から徒歩1分の好立地。2014年から東急が構想した場所だ。1フロア構成の売り場面積は287平方メートルでそのうち10%程度が資料展示やフィルム上映が可能なコミュニティスペースに充てた。商品はクライミングや登山、トレイルランニング、フィッシングなどのテクニカルウエアからライフスタイルウエア、キッズ/ベビー製品、「パタゴニア プロビジョンズ」の食品まで幅広い製品に加え、アウトレット製品までがそろう。
山並みの稜線と調和する、折り重なるような屋根が特徴的な木造の店は当初、鉄骨造を想定していたという。パタゴニアから東急へのリクエストに.加え、材料と工賃の高騰が重なり、木造建築が叶った。設計を担当した山口まどか東急設計コンサルタント建築設計本部第一設計統括室は「ポイントは中と外の境界を感じさせない、風が抜けるような環境と調和するデザイン。木漏れ日の影を連想したトラス梁で、店全体を軽やかな印象にするための構造作りに時間を要した。実は木造にすることで工期を短縮できコストも削減できた」と語る。強度を補うために採用したブレース構造や、柱なども店のデザインになじんでいる。
自然光がたっぷりと入る、木のぬくもりを感じられる店内は浅間山の麓にある雄大な自然や軽井沢の歴史から着想を得たという。エントランスのステンドグラスには浅間山と白樺を描き、試着室奥には、かつてこの場所には草軽電気鉄道の新軽井沢駅舎があったことを伝えるボードを掲示した。
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自然環境と共生するようデザインされた木造建築は、環境への負荷軽減だけでなく、カラマツ、クリ、古木、鉄平石、浅間石などの長野県産の資材を使用することで地域の環境建築の活性化を目指している。また、日本の伝統的な木材の加工方法である釿(ちょうな)を取り入れ、荒々しくダイナミックな波状の削り肌は、釿を振り下ろして打ちつけることで木材の表面を削り出した。ファサード看板は、戦前80年以上前に建てられた古民家を解体したときに発生した松の古木を取り入れた。あえて着色していない木材や、構造をデザインに組み込んだ店は“シンプリシティ”を重視するパタゴニアの考えとマッチした。
海や山に近く自然の変化を感じやすいフィールドショップはパタゴニアにとっても重要な拠点だ。そこで暮らす人々やアウトドアスポーツを楽しむ人とのコミュニティ作りにも力を入れる。
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コミュニティスペースはパタゴニアの始まりの場所、創業者がクライミング用のギアを作るために立ち上げたシュイナード・イクイップメントの工場を模した。ここではフィルムの上映や、環境保全活動と連動したイベントやワークショップなどを予定しており、ローカルコミュニティが集うスペースになる。とはいえ、コミュニティを作るのは簡単ではない。中西悦子パタゴニア日本支社環境・社会部門アクティビズムコーディネーターは「スタッフがその土地に暮らす中で、地域の人が困っていることや楽しんでいることは何かを見つけ、パタゴニアの強みを生かしてさらに良くなる方法を探りながら進めることを大切にしている。相互理解を深めるように努めている」と話す。店内にはスタッフとのコミュニケーションにつながる一助になるような、地域のエネルギーや食、農に関わる団体とパタゴニアとの取り組みなどを紹介するコーナーもある。
軽井沢町は「自然と共生した環境の保全と育成」をビジョンに掲げ、人びとや町全体が環境へ配慮した取り組みを行っている。同店は地域コミュニティと環境保護活動を行ったり、その情報を発信したりする拠点になる。
■パタゴニア 軽井沢
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東8-3(JR軽井沢駅北口 徒歩1分)
電話番号:0267-41-6681
営業時間:11:00~19:00
定休日:年末年始 毎月第三水曜日