ジュンは、高島屋とのコラボ業態として「ロペ」と「サロン アダム エ ロペ(以下サロン)」を組み合わせたライフスタイルショップ「モア サロン エ ロペ(以下モア)」を、5月12日、高島屋大阪店3階にオープンした。百貨店にはこれまで「ロぺ」の単独店を出店してきたが、「サロン」が百貨店に出店するのは初めて。ライフスタイル提案型の大型店で、百貨店の富裕層の取り込みを狙う。
約200平方メートルの店舗は“モア ラブ,モア ウーマン”をコンセプトに、ロペのルーツであるフランスのリゾート地、サントロペにある開放感のある住まいをイメージした。オープン時は「ロペ」と「サロン」をブランドごとに分けて展開。アパレルに加え、服飾雑貨と生活雑貨、フェムテックアイテムなどをそろえる。商品構成はアパレルが約8割に対して雑貨は約2割。特に生活雑貨では、暮らしを豊かにする器の品ぞろえを充実させた。今秋には、顧客動向も反映した「モア」オリジナルの商品を開発する予定だ。アパレルのポップアップのほか、器などの作家を招いてのワークショップや販売会などのイベントを1カ月から1カ月半に1回のペースで開催する。
百貨店の店舗のあり方を変える
同店は高島屋大阪店の春の改装に合わせて開業した。百貨店業界は、コロナ禍で売り上げ、客数ともに大きく落ち込んだが、とりわけ30歳以下の次世代顧客の減少が顕著になっている。そこで高島屋では「既存の深化」と「新しい発想のマーケット創造」をキーワードに、ファッションフロアの再生をめざして10年後を見据えた売り場づくりに着手。カルチャーも含めたライフスタイル提案を得意とするジュンとの協業により、婦人服フロア活性化の起爆剤として立ち上げた。メンズフロアとカフェに隣接させることで、カップル客の来店を促し、フロア内の回遊性を高める狙いがあるという。
同プロジェクトを立ち上げた髙島屋MD本部の嶋廻由希子部長はこう語る。「われわれが考える既存の深化とマーケット創造というコンセプトでファッションを再生するには、時間軸を使って空間作りをしてくれる企業との取り組みが不可欠。婦人服フロアにその考えを導入して新規客を増やしていきたい」。
ターゲットは、従来からのファッション感度の高い顧客に加え、ファッションを最優先するよりも生活そのものの質を上げてライフスタイルを豊かにしたいというマインドの持ち主に設定した。上質なものを好む百貨店の顧客の期待に応えるクオリティーとライフスタイル提案で、幅広い世代の共感を得られる売り場を展開する。
百貨店の大型ショップを初めて任されたジュン側も、コロナ後のリアル店舗のあり方を社内で議論していたこともあり、リアル店舗での購買体験価値を高めていくには、ゆったりした空間で顧客が快適に過ごせるライフスタイル提案型の店づくりが必要と考えていた。
「コロナ禍を経て、内面や生活に向きあうお客さまが非常に増えてきている。売り場の効率を求めてコンテンツを詰め込むよりも、滞在時間が長くなる店づくりが必要と感じていた。ロペのエレガンスと何を組み合わせるか考えたとき、ライフスタイル提案型のサロンが一番しっくりくるということになった」と、ジュンの原誠常務は振り返る。
高島屋の横浜店、京都店にも
同社はセレクトショップの「ビオトープ」をはじめ、いくつかのブランド・業態で空間演出の実績はあったが、それを百貨店内でどこまで表現できるかどうかが課題だった。そこで、今回の取り組みでは百貨店の常識を覆す売り場づくりにもトライしている。
例えば、通常、百貨店のインショップでは空間を開放すべき箇所、閉鎖する箇所が定められており、他にも規制が多い。しかし「サロン」のコンセプトには、プライベートな空間というキーワードが元々あり、それを提案できなければ、取り組み自体が難しくなる。空間の動線に関する規制が一番の課題だったが、根気強く何度もやりとりすることで規制を乗り越えることができた。
「百貨店業界は、以前からライフスタイル提案売り場の開発に取り組んできたと思うが、なかなか実現できなかったのは空間の規制に縛られていたからでは。ライフスタイル提案ショップといいながら平場のように見えるのは避けたいと思い、そこを突破することに力を入れた」(原常務)。
「モア サロン エ ロペ」は高島屋大阪店に続いて、6月上旬には高島屋横浜店、10月には高島屋京都店にも導入する予定。大阪店では「ロペ」を中心に展開しているが、横浜店ではサロンを主体的に打ち出し、エリアの特性に沿ったMDを組んでいく。百貨店業界で売り場改革が進む中、「他の有力百貨店とも機会があれば、ライフスタイル提案型ショップを作っていきたい」(原常務)考えだ。