「西武池袋本店は大きな取引先。影響は避けられないが、百貨店市場について悲観はしていない」。
そう語るのは三陽商会の大江伸治社長だ。9月1日付でセブン&アイ・ホールディングスが子会社のそごう・西武を米投資会社のフォートレス・インベストメント・グループに売却し、旗艦店の西武池袋本店にはヨドバシカメラの大型店が入ることが確定した。10月6日時点で「そごう・西武からの説明はまだない」(大江社長)ものの、報道では百貨店区画は半減され、衣料品売り場も大幅に縮小すると伝えられている。国内売上高3位の西武池袋本店の売り場削減は、アパレル企業の収益に直結する。
それでもあまり悲観しないのは、一連の改革によって各ブランドの地力が備わってきたからだ。6日に発表された23年3〜8月期決算では「ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ」「ポール・スチュアート」「マッキントッシュ ロンドン」など基幹7ブランドは全て営業黒字を確保した。プロパー消化率の改善で平均売価は12%上昇し、円安などのコスト高を吸収した。好業績を受けて24年2月期の業績予想を上方修正。“バーバリー・ショック”から7期ぶりの営業黒字を達成した前期(23年2月期)以降、上げ潮ムードが続く。
大江社長は23年10月の小田急百貨店本館の閉店を引き合いに、「新宿地区の三陽商会の売上高が落ちたかといえば、落ちてはいない。小田急のお客さまは京王(百貨店)や高島屋、伊勢丹で当社の商品を買ってくれている」と話す。ターミナルの再開発によって小田急百貨店や東急百貨店など電鉄系百貨店の売り場が減る事例が相次ぐものの、ある程度は近隣の百貨店が受け皿として機能すると見る。
野村総合研究所の調べによると、純金融資産を1億円以上保有する世帯は、05年に比べて21年は1.7倍の148万世帯に増加した。その恩恵はラグジュアリーブランドだけでなく、三陽商会が主戦場とするアッパーミドル向けのブランドにも波及すると読む。「むしろ攻勢をかけて(百貨店の)売り場面積を広げたい」とも言う。