毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月23日号からの抜粋です)
廣田:この環境危機下にどういう会社のあり方が理想なのかを考えたときに、環境保全をしながら営利企業できちんと収益を上げているパタゴニア(PATAGONIA)を特集したいと考えました。今回の取材で一番驚いたのが、昨年からの新体制が、最終的にパタゴニアのビジネスを強化することにつながっていたことです。
向:昨年、創業者のイヴォン・シュイナード(84歳)が会社を、設立したパタゴニア・パーパス・トラストとNPOのホールドファスト・コレクティブに譲渡したんですよね。
廣田:パーパス・トラストは、パタゴニアのパーパスが守られているかを監査する事業体で、パタゴニアのビジネスが生み出した利益は一度ホールドファスト・コレクティブに入り、再分配される仕組みになっています。パタゴニアのさまざまな事業に適切に再投資され、企業としての競争力を保ちながら、自然保護に取り組む団体にも資金がすぐに分配される。カリスマ経営者のイヴォンによる、「地球を救うためにビジネスを営む」体制なのだと感心しました。
向:日本の経営者にとってイヴォンは“ビジネスアイドル”。アメリカ西海岸文化の影響を受けた人たちってイヴォンについて目をキラキラさせてうれしそうに話します。白地図に自分たちで道を描くような、そんな経営姿勢に憧れるのでしょうね。
廣田:“責任ある企業”として、「企業は資源の基盤に責任を負う」という強い信念があるから成立するのだと思います。
向:同行した取材で私が印象的だったのは、マーティ・ポンフレー日本支社長が「普段、山に接していると先のことは分からないという感覚があるから、目の前の変化に柔軟に対応できる」と語っていたこと。この不確実性の時代にアウトドアブランドが全般的に好調なのは、そういうカルチャーがあるからかもしれないです。
廣田:長期的すぎる計画は立てず、常に社員に自分たちの状況を共有することが強さにつながっているのでは。“新しい資本主義”が求められる時代に、企業はどうあるべきかを考えるヒントになる特集になったと思います。パタゴニアは天然素材回帰にも取り組んでいて、アイコニックな製品のアップデートについても詳しくまとめました。モノを作る時にどういう視点が必要かということを考えるのにも、役立ちます!