毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月15日号からの抜粋です)
本橋:昨年1月の「メード・イン・ジャパン」特集で若い職人や工場を取材して、改めて「日本のモノ作りはすばらしい」と思うと同時に、「世界で売れないと後継者も育たない」と感じました。そこで今回の特集では、日本のモノ作りを、世界で認められる“ジャパン・ラグジュアリー”として売り出すには何が必要なのか探りました。
村上:「カルティエ(CARTIER)」などを手掛けるリシュモン ジャパンの三木均社長と羽田未来総合研究所の大西洋社長に対談してもらいましたが、三木社長がラグジュアリーの条件として挙げたのは「歴史」と「世界のどこでも売られていること」と「独自性」。日本のほとんどのブランドに足りていないのが2番目です。
本橋:そこが課題ですよね。世界との出入り口である羽田空港で、ラグジュアリーになりえる日本のモノ作りを集積する「ジャパン マスタリー コレクション」は、発信の場として重要です。
情熱を持った人たちにフォーカスしたい
村上:三木社長の話で感じたのは、ラグジュアリーブランドで働く人たちの、30年、なんだったら50年先を考えて、次の人にバトンを渡す覚悟。欧州はどの国も歴史あるものを大事にしようという考えが文化として根付いているから、バトンを渡す覚悟を持って働いています。日本のモノ作りメーカーに、そこまでの覚悟があるのか?同様に「WWDJAPAN」というブランドのバトンを持って走っている自分の働き方さえ考えました。
本橋:バトンはギリギリ渡ってきたけど、やはり売れないとバトンを受け取る人が出てこないです。羽田の売り場をきっかけに、日本の技術を打ち出す場がもっと増えてほしいです。
村上:ここから先は、政府の役割も大きいでしょうね。
本橋:服飾史家・著作家の中野香織さんにも取材しましたが、やはり欧州にはラグジュアリー文化に関する教育やクリエイションを大事にする土壌があるようです。議論を活発にし、地道にアクションを起こしていく、そういうムードを醸成していきたいです。
村上:“モノ作りだけ”からは脱却しないとと分かっていても、それがなかなかできない。メディアとしては、もっと情緒的価値、「すばらしいモノを生み出したい」「それを世界に広めたい」という人たちの情熱にフォーカスすることで、先につなげたいですね。